JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS25] 生物地球化学

コンビーナ:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

[MIS25-15] 有色溶存有機物(CDOM)から見る西部北太平洋及び北部ベーリング海の水塊構造と栄養塩分布

*大井田 穣示1平譯 享2山下 洋平3阿部 泰人2西岡 純4和賀 久朋2野村 大樹2 (1.北海道大学 大学院 水産科学院、2.北海道大学 大学院 水産科学研究院、3.北海道大学 大学院 地球環境科学研究院、4.北海道大学 低温科学研究所)

キーワード:水塊構造、有色溶存有機物、北部ベーリング海、西部北太平洋

日本沿岸東部の黒潮-親潮混合域と北部ベーリング海は世界でも有数の高基礎生産海域として知られている。両海域ともに低温・富栄養な水塊と高温・貧栄養な水塊が混合する場所であり(Yasuda et al., 2003; Grebmeier et al., 1988)、高い基礎生産を生み出すメカニズムは類似していると考えられる。従来、両海域の水塊分類には水温と塩分の指標が用いられてきた(Hanawa and Mitsudera 1987; Danielson et al., 2017; Eisner et al., 2013)。しかし、近年の温暖化による水温の上昇や、海洋構造の変化に伴い、両海域の水塊特性は水温・塩分のみでは捉えられなくなる可能性がある。そこで、本研究では水塊分類の新たな指標として有色溶存有機物(CDOM)の光吸収特性(aCDOM)を用い、両海域の水塊構造と栄養塩分布との関係を把握することを目的とした。2017-2019年の夏季に、対象海域の計126観測点においてaCDOMを測定し、CDOMの量の指標となる350 nmのaCDOM(aCDOM(350))および性質の指標となるaCDOMのスペクトル勾配(S275-295およびS350-400)を算出した(D’Sa et al., 2014; Helms et al., 2008; Yamashita et al., 2013)。これらのaCDOMパラメータを使用してクラスター分析を行った結果、対象海域の水塊は8つに分類された。aCDOM(350)の値が高く、S275-295の値が低い陸域の影響を強く受けている水塊は北部ベーリング海表層沿岸域に多く分布していた。S275-295S350-400の値が最も低い底層水の特徴を強く持つ水塊はアナディール湾底層のみに見られた。aCDOM(350)の値が低く、S275-295の値が高い表層水の特徴を持つ水塊は両海域の表層に広く分布していた。これらCDOMパラメータが表す水塊の特徴は、過去に報告された水塊の地理的分布と整合していた。さらに、高い基礎生産を持つ水塊は、両海域ともに底層または亜表層水の特徴を持つ水塊と表層水の特徴を持つ水塊の混合によって生成されていることが示唆された。また、アナディール湾で見られた底層水の特徴を持つ水塊と、日本沿岸北東部で見られた亜表層水の特徴を持つ水塊はともに栄養塩濃度が高く、CDOMの吸収係数パラメータをトレーサとして高栄養塩水塊の分布の把握に利用できることが示唆された。