JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS25] 生物地球化学

コンビーナ:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

[MIS25-P05] バクテリア核酸の炭素窒素安定同位体比測定

*大西 雄二1福島 慶太郎1木庭 啓介1 (1.京都大学生態学研究センター)

キーワード:安定同位体、核酸

炭素・窒素安定同位体比を用いた生態系の食物網構造解析では、採取可能な生物でしか同位体比を測定することができないため、採取困難な微生物についての生態系内での役割を評価することができない。そこで本研究では核酸に着目した。しかし、そもそも核酸の同位体比が測定された例はほとんどなく、核酸の同位体比から菌体の同位体比を推定できるかという最も基礎的な情報も存在しない。本研究では、安定同位体比測定に適した核酸の抽出方法の検討と、バクテリア菌体―核酸間での同位体比の差を明らかにすることを目的とした。
 培養している脱窒菌(Pseudomonas aureofaciens)を用いて、核酸の抽出と同位体比測定を行った。複数の条件でニッポン・ジーン社の核酸抽出キットISOPLANTとISOPLANT IIを用いて、一部改良したプロトコルで核酸を抽出した。抽出物はエタノール沈殿後、MQ水に溶解した。溶液の一部はタンパク質・RNA・DNA濃度を測定した。残りの溶液と脱窒菌菌体は凍結乾燥させ、微量試料用に一部改良したEA/IRMSにて炭素・窒素安定同位体比を測定した。
 ISOPLANT II抽出物ではタンパク質や試薬の除去が不十分であり、同位体比測定に適していないことが明らかとなった。ISOPLANT抽出物では、タンパク質は検出されず、またRNAが多量に含まれていた。菌体と抽出物の同位体比の差は炭素で−2.2 ± 0.9‰、窒素で+7.7 ± 0.8‰と、大きな差が見られたが、その差の変動は小さかった。この結果は、バクテリアにおけるRNAの同位体比は菌体の同位体比によって決定されていることを示唆している。