JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS25] 生物地球化学

コンビーナ:木庭 啓介(京都大学生態学研究センター)、柴田 英昭(北海道大学北方生物圏フィールド科学センター)、大河内 直彦(海洋研究開発機構)、山下 洋平(北海道大学 大学院地球環境科学研究院)

[MIS25-P07] 吉野川水系の河川水質にみられる流域地質,遡上海水および人為起源物質の影響

*横尾 頼子1長山 早希1吉田 知洋1安間 了2 (1.同志社大学理工学部、2.徳島大学大学院社会産業理工学研究部)

キーワード:吉野川、イオン組成、海水遡上

吉野川の流域は四国4県に渡り,その流域の地質は中央構造線を境に南北で大きく異なっている.本研究では,吉野川水系河川水の水質を分析し,流域地質や人間活動,遡上海水が与える影響を明らかにすることを目的とした.

2012年7月26日,29日,30日,8月1日に吉野川の上流から下流までの本流と支流を,2019年7月20,21日に吉野川水系河口域において,pH,ECを測定し,0.2 μmメンブレンフィルターで河川水を濾過した.イオンクロマトグラフィーで主要イオン濃度を,ICP質量分析装置で微量元素とSiの濃度を測定した.重炭酸イオン濃度は未濾過試料を自動滴定装置で滴定して求めた.

吉野川本流では河口付近の地点を除いて,Ca-HCO3型の水質であった.吉野川の南側から流れ込む支流ではCa-HCO3型と(Ca+Mg)-HCO3型の水質を示すグループに分かれた.吉野川本流の南側を流れる園瀬川では,Mg2+とSiの濃度が高かった.園瀬川の流域には,SiO2が50%以上でMgに富む苦鉄質片岩を含む三波川変成帯が分布する.この緑色片岩の風化によって,園瀬川はMg2+とSiを多く含むと考えられる.一方,北側から流れ込む支流は,Ca-(HCO3+SO4)型の水質を示し,SO42-濃度が高かった.旧吉野川と今切川では,陰イオンに占めるSO42-とNO3-の割合と,Al,P,Siの濃度が他の河川よりも高かった.これは旧吉野川と今切川の流域に農地や畑が広がっていることによると考えられる.
河口から15 kmまでの吉野川水系河川水は上流から下流にかけて,Ca-HCO3型,中間型,Na-Cl型の水質に分けられた.吉野川の下流部の河川水は遡上海水の影響を受け,EC値が高く,主要イオン組成がNa-Cl型であった.徳島市街地を流れる河川では,吉野川本流よりも徳島市内を流れる支流の方がNa+とCl-の濃度が高いことから,遡上海水の影響は吉野川本流よりもその支流の方が大きい.新町川最上流部は吉野川本流と似たイオン組成を示したことから,遡上海水よりも吉野川本流の流入による影響を大きく受けている.徳島市街地において,最も河口から離れた地点となった田宮川の河川水は,EC値とP,SO42-およびNO3-の濃度が高かった.これは流域の排水処理設備の違いによると考えられる.