JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS26] 地震・火山等の地殻活動に伴う地圏・大気圏・電離圏電磁現象

コンビーナ:児玉 哲哉(宇宙航空研究開発機構研究開発部門第一研究ユニット)、長尾 年恭(東海大学海洋研究所)

[MIS26-01] 柿岡の地磁気毎秒値に明け方に見られる特徴的なノイズ

*小河 勉1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:ULF帯地磁気変動、地震先行現象、乱数シミュレーション

気象庁地磁気観測所(柿岡)における明け方02:30JSTから04:00JST、周期約100sの地磁気鉛直成分毎秒値に、観測所から水平距離100km以内、深さ60km以内のM4以上の地震発生に6日から15日先行した異常が統計的に見られる、との報告がある(Han et al., 2014)。本研究はその追試である。

 Han et al. (2014)による議論は、地磁気鉛直成分時系列のエネルギーの実測値に対し、参照点における地磁気鉛直成分のエネルギーの1次関数で予測値を算出し、その比を論じることで地磁気誘導成分を考慮する。しかしこの手法は精度が低いので、本研究では時系列で、参照点における地磁気水平成分と相関のある成分を推定してこれを除去し、残差時系列のエネルギーを算出する。残差時系列には32秒から64秒及び64秒から128秒の2つの周期帯域で、03:50JST頃にほぼ毎日、顕著な振動がみられる。この振動は振幅が日毎に異なるという特徴がある。

 残差時系列から得られる、02:30JSTから04:00JSTの2001年から2010年末の日々の残差エネルギーを標本として算出した結果、その頻度分布は逆ガンマ分布にしたがうことが見出された。毎年、年末年始に低下する傾向が見られるため、残差時系列が人間社会活動に支配されていることを示唆する。また逆ガンマ分布の上側95%信頼限界を超える値の大きな標本を異常と定義すると、大晦日の深夜の標本が必ず異常と判定される。首都圏の直流電車の終夜運転に起因する磁気ノイズが原因と推察される。

 異常発生日と地震日との相関がないとする仮説を、異常発生日、10年間で52個の顕著な地震の発生日のカタログと乱数シミュレーションにより検定した。3つの周期帯、32sから64s、64sから128s及び128sから256sで、時間帯02:30JSTから04:00JSTの残差エネルギーの異常日については、地震日に6日から10日先行して有意水準5%に対して信頼限界を超えたカウント数となり、無相関の仮説が棄却された。一方、同じ検定を時間帯02:00JSTから03:30JST及び02:15JSTから03:45JSTの残差エネルギーについて行うと、3つの周期帯すべてで無相関の仮説が棄却されない。Han et al. (2014)の結果は、03:45JSTから04:00JSTの間に地磁気データに含まれる、自然信号もしくは人間社会活動によるノイズによってもたらされていると推察される。