JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS26] 地震・火山等の地殻活動に伴う地圏・大気圏・電離圏電磁現象

コンビーナ:児玉 哲哉(宇宙航空研究開発機構研究開発部門第一研究ユニット)、長尾 年恭(東海大学海洋研究所)

[MIS26-P01] 2011年1月の地磁気静穏日における日本付近の地磁気静穏日日変化の内外分離

*小河 勉1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:Sq日変化、球面調和解析、自然直交基底解析、2011年東北太平洋沖地震(Mw 9.0)

2011年東北太平洋沖地震(東北地震、Mw 9.0)に先行して、2011年1月の地磁気国際静穏日における地磁気日変化が日本付近で異常だったとの報告が、内外分離を用いて示されている(Liu et al., 2019)。本研究はその追試である。

 解析に用いたデータは、南北半球の東経115度から160度の範囲の地磁気観測所・観測点21箇所の毎分値である。2009年から2012年までの4年間、毎月5国際静穏日の合計240日分の毎分値から毎30分値を、経度から算出される地方時で合成した。自然直交基底法を用いてその中から3成分各成分毎にSq成分を同定した。求められた基底のうち、1次は夏の日変化を代表すること、1次と2次の結合からSq日変化の位相を含めた季節変化が表現できるようになることが分かった。本研究では3次までを採用してSq成分とした。

 内外分離はSlice methodにより地方時に対して行い、ついで等価電流系を推定した。その際、球面調和解析では点予測値だけでなく予測区間も算出できるようにした。打ち切り次数は全観測地点・成分の平均的な予測区間が極小となるように、日毎に変えた。

 得られた等価電流系には2011年1月と2月とで顕著な差はなく、Liu et al. (2019)が主張するような2011年1月に東北地方の上空及び地中に特徴的な渦が見出されることはない。内部起源・外部起源両成分の和はデータを、有意水準5%の予測区間でよく説明する。内外成分にはLiu et al. (2019)が示すような異常な振幅は認められない。

 異なる結果が導かれた原因を考察する上で有用な、Liu et al. (2019)の解析の3つの特徴を記す。1)経度差約45度に及ぶ観測所・観測点分布に対し、地方時として日本標準時を用いている。2)自然直交基底法で得られる1次の基底のみをSq成分として採用している。3)球面調和解析における打ち切り次数が大きく、次数67、位数7を採用しているため、多重共線性によって標準誤差が大きくなっている可能性がある。