JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS27] 地球流体力学:地球惑星現象への分野横断的アプローチ

コンビーナ:伊賀 啓太(東京大学大気海洋研究所)、吉田 茂生(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、柳澤 孝寿(国立研究開発法人海洋研究開発機構 海域地震火山部門)、相木 秀則(名古屋大学)

[MIS27-05] 1.5層浅水系における加熱冷却が生成する赤道スーパーローテーション

*藤林 凜1樫村 博基1高橋 芳幸1林 祥介1 (1.神戸大学・大学院理学研究科 惑星学専攻)

キーワード:スーパーローテーション

金星やタイタン, 潮汐固定された系外惑星では赤道で自転方向に風が吹いている. このような東西風はスーパーローテーションと呼ばれる. Showman and Polvani (2010) は活動的な上層と静止した下層から成る1.5層浅水系を用いて下層から上層への惑星運動量の移流を適切に表現することで, 赤道で加熱と冷却が与えられるときに赤道スーパーローテーションが生じることを示した. しかし, 彼らは摩擦時定数 τdrag = 5日, 放射時定数 τrad = 5日で地球の惑星パラメータに対する結果しか示していない. 本研究では, Showman and Polvani (2010) で提示されたモデルにおいて, 広いパラメータ範囲でも赤道スーパーローテーションが生成されるかどうかを確かめるため, 摩擦時定数を 0.1日 ≦ τdrag ≦ ∞ の範囲で変化させたパラメータスイープ実験を行った.



実験の結果, 全ての場合において赤道でスーパーローテーションが生じた. また, 摩擦時定数が大きくなるにつれて, 赤道上の東西平均東西風速度ūは大きくなった. その摩擦時定数依存性は, τdrag ≦ 1日のときはū ∝ τdrag2であったが, 1日 < τdragのときはτdragが増加するにつれてūの増加率は小さくなった.



運動量収支解析の結果, すべての場合で赤道上において, 運動量フラックスの収束による東向き加速は, 質量強制に伴う運動量変化による西向き加速によってほとんど打ち消されていた. よって赤道スーパーローテーションの生成・維持には下層から上層への惑星運動量の移流を表す項Rによる加速が重要であることがわかる. もし項Rによる加速が摩擦時定数に依存しなければ, 項Rとレイリー摩擦項の釣り合いから ū ∝ τdrag1 を予期する. しかし, 実際には, 赤道における東西平均した東西風と摩擦時定数の関係はこの比例関係にはなっていない.


摩擦時定数が小さいとき (τdrag ≦ 1日), 層厚擾乱による圧力傾度力と (速度の擾乱成分による) 摩擦力の釣り合いが卓越し, 摩擦時定数に比例して速度擾乱も大きくなる. 一方で, 項Rの大きさは速度擾乱の大きさに比例するため, 結果としてūはτdrag2に比例していると考えられる. 摩擦時定数が大きく, 1日 < τdrag ≦ 50日の範囲ときは, 摩擦時定数が大きくなるにつれてと加熱領域における西風擾乱が大きくなっていくが, 東風擾乱の大きさはほとんど変化しなかった. これに伴い, 項Rによる加速が小さくなるため, 摩擦時定数が大きくなるにつれてūの増加率が小さくなったと考えられる. 摩擦時定数が非常に大きいとき(τdrag > 50日)には解は定常状態には達せず, Matsuno-Gillパターンの解とも類似していなかった. また何らかの不安定が生じており, このときの赤道スーパーローテーションの生成・維持に影響している可能性がある.