[MIS30-02] ドローンとディープラーニングを用いた海岸漂着プラスチックごみ定量化手法の構築
キーワード:ドローン、ディープラーニング、画像解析、海岸漂着プラスチックごみ
1. はじめに
主に沿岸付近に暮らす人々を苦しめる海岸漂着ごみは、早急に対策が必要な地球環境問題の一つである。しかしながら現状では、効率的な漂着ごみ回収作業の策定や重点的なごみ回収海岸の選定に資する様な海岸漂着ごみ定量化手法は確立されていない。そこで本研究は、広範な海岸をカバーする機動性、海ごみ判定の客観性、そして誰でも利用できる汎用性をキーワードに、ドローン空撮とディープラーニング(DL)による画像解析を複合させ、過去の研究とは異なった観点から、海岸漂着ごみの7割を占めるとされる(Derraik, 2002)プラスチックごみの総体積量を推定する新しい海岸漂着ごみ定量化手法を構築する。
2. 使用機器・方法
2-1 ドローン による海岸の三次元航空測量
本研究は、鹿児島県日置市吹上浜と薩摩川内市上甑島里海岸にて、DJI社製のドローン「Phantom 4」を用いて海岸の一括観測を行った。空撮によって得られた位置情報は、空中三角測量の原理(Schenk, 2004)を元に、三次元点群、それに面を持たせたデジタルサーフェスモデル(DSM)、そしてオルソ画像を作成するために使用された。ただし、ドローンに搭載されているGPSは、様々な条件によりその精度が大きく変動することが知られているため(Kako et al., 2010)、位置情報は現地測量の結果を元に補正した。また、地上基準局から転送される誤差情報を利用するなどして位置情報を自動補正可能なPhantom 4 RTK (Real Time Kinematic)も空撮に利用し、その有用性の検討も行った。吹上浜では予め体積が既知である擬似ごみを設置し、本手法の精度評価のための空撮を行った。一方、甑島では、実際に漂着したプラスチックごみの空撮を行った。
2-2 DLを基盤とした画像解析による漂着プラスチックごみの自動検出
本研究では、Python用のDLフレームワークであるKeras(https://keras.io) を使用してDLモデルを構築し、プラスチックごみの自動検出を行った。学習データとしては、1度目の観測から得られた海岸のHSV値画像(Hue, Saturation, Value of Lightness)を二値ベクトルデータ(0 or 1)に変換したものを使用し、そのラベリングは海岸と漂着ごみを2色(白 or 黒)に分けることで行った。本研究では、この学習データを任意に一万個ずつの訓練データと検証データに分け、DLモデルの構築に供した。学習過程では、DLモデルを512サンプルのミニバッチで20エポックの訓練をすると同時に、検証データを使ってモデルの損失率と精度(正解率)の確認を行った。加えて本研究では、客観的に照り返しや影などの除去処理を行うため、海岸の高さ情報から求めた「海岸勾配」を判定基準に取り入れた。ここでは、ドローン空撮から得られた三次元点群情報をオルソ画像にしたものを使用する。三次元点群をオルソ画像にすると、海岸上にある物体のエッジは、その高さ勾配に応じて強調される。故に、この情報を用いれば、海岸上の対象物の検知のみならず、過去の手法ではその対応に苦慮した(Kako et al., 2010等)、影や照り返しの除去も容易である。最後に、オルソ画像から抽出された漂着ごみのエッジをCanny法(Canny,1986)によって検出し、それをDSMに入力することで、エッジに囲まれた範囲の底面積と高さ(すなわち、体積)を推定した。
3. 結果
表1に、実測値と上記の方法で推定した推定値との比較結果を示す。本手法が持つ誤差は1〜16%であり、バルーン空撮と現地観測を組み合わせた既往研究(誤差 約±35%; Nakashima et al., 2012)と比べて高精度である。1,2回目の誤差は、他の結果と比べて比較的大きな値を示すが、これは高さ情報を修正するための立体対空標識を設置しなかったことに起因する。また、Phantom 4 RTKを用いて推定した体積の精度は位置補正したものと比べても非常に高く、その位置情報を修正せずとも、体積推定に使用可能であることも分かった。甑島の里海岸に適用した結果は、字数制限の関係上、講演時に述べる。
4. まとめ
本研究は、ドローン観測とDLを基盤とした画像解析技術を組み合わせることで、海岸漂着プラスチックごみ量を客観的に推定する手法を構築した。その結果、本手法は、約5%前後の誤差で漂着プラスチックごみの体積を推定可能であることが示された。ドローンによる海岸観測は自動飛行・撮影機能が充実しているため、地方自治体やNPO等でも容易に参画できる。地方自治体等と共同して、このようなドローン観測を全国各地の海岸で実施し、その結果を我々のサーバ上に転送した後、画像解析を施すシステムを構築すれば、自治体などが精度良く海ごみ漂着量をモニターできるようになるだけでなく、今まで知ることができなかった全国的な漂着ごみ現存量を推定することも可能となるだろう。
主に沿岸付近に暮らす人々を苦しめる海岸漂着ごみは、早急に対策が必要な地球環境問題の一つである。しかしながら現状では、効率的な漂着ごみ回収作業の策定や重点的なごみ回収海岸の選定に資する様な海岸漂着ごみ定量化手法は確立されていない。そこで本研究は、広範な海岸をカバーする機動性、海ごみ判定の客観性、そして誰でも利用できる汎用性をキーワードに、ドローン空撮とディープラーニング(DL)による画像解析を複合させ、過去の研究とは異なった観点から、海岸漂着ごみの7割を占めるとされる(Derraik, 2002)プラスチックごみの総体積量を推定する新しい海岸漂着ごみ定量化手法を構築する。
2. 使用機器・方法
2-1 ドローン による海岸の三次元航空測量
本研究は、鹿児島県日置市吹上浜と薩摩川内市上甑島里海岸にて、DJI社製のドローン「Phantom 4」を用いて海岸の一括観測を行った。空撮によって得られた位置情報は、空中三角測量の原理(Schenk, 2004)を元に、三次元点群、それに面を持たせたデジタルサーフェスモデル(DSM)、そしてオルソ画像を作成するために使用された。ただし、ドローンに搭載されているGPSは、様々な条件によりその精度が大きく変動することが知られているため(Kako et al., 2010)、位置情報は現地測量の結果を元に補正した。また、地上基準局から転送される誤差情報を利用するなどして位置情報を自動補正可能なPhantom 4 RTK (Real Time Kinematic)も空撮に利用し、その有用性の検討も行った。吹上浜では予め体積が既知である擬似ごみを設置し、本手法の精度評価のための空撮を行った。一方、甑島では、実際に漂着したプラスチックごみの空撮を行った。
2-2 DLを基盤とした画像解析による漂着プラスチックごみの自動検出
本研究では、Python用のDLフレームワークであるKeras(https://keras.io) を使用してDLモデルを構築し、プラスチックごみの自動検出を行った。学習データとしては、1度目の観測から得られた海岸のHSV値画像(Hue, Saturation, Value of Lightness)を二値ベクトルデータ(0 or 1)に変換したものを使用し、そのラベリングは海岸と漂着ごみを2色(白 or 黒)に分けることで行った。本研究では、この学習データを任意に一万個ずつの訓練データと検証データに分け、DLモデルの構築に供した。学習過程では、DLモデルを512サンプルのミニバッチで20エポックの訓練をすると同時に、検証データを使ってモデルの損失率と精度(正解率)の確認を行った。加えて本研究では、客観的に照り返しや影などの除去処理を行うため、海岸の高さ情報から求めた「海岸勾配」を判定基準に取り入れた。ここでは、ドローン空撮から得られた三次元点群情報をオルソ画像にしたものを使用する。三次元点群をオルソ画像にすると、海岸上にある物体のエッジは、その高さ勾配に応じて強調される。故に、この情報を用いれば、海岸上の対象物の検知のみならず、過去の手法ではその対応に苦慮した(Kako et al., 2010等)、影や照り返しの除去も容易である。最後に、オルソ画像から抽出された漂着ごみのエッジをCanny法(Canny,1986)によって検出し、それをDSMに入力することで、エッジに囲まれた範囲の底面積と高さ(すなわち、体積)を推定した。
3. 結果
表1に、実測値と上記の方法で推定した推定値との比較結果を示す。本手法が持つ誤差は1〜16%であり、バルーン空撮と現地観測を組み合わせた既往研究(誤差 約±35%; Nakashima et al., 2012)と比べて高精度である。1,2回目の誤差は、他の結果と比べて比較的大きな値を示すが、これは高さ情報を修正するための立体対空標識を設置しなかったことに起因する。また、Phantom 4 RTKを用いて推定した体積の精度は位置補正したものと比べても非常に高く、その位置情報を修正せずとも、体積推定に使用可能であることも分かった。甑島の里海岸に適用した結果は、字数制限の関係上、講演時に述べる。
4. まとめ
本研究は、ドローン観測とDLを基盤とした画像解析技術を組み合わせることで、海岸漂着プラスチックごみ量を客観的に推定する手法を構築した。その結果、本手法は、約5%前後の誤差で漂着プラスチックごみの体積を推定可能であることが示された。ドローンによる海岸観測は自動飛行・撮影機能が充実しているため、地方自治体やNPO等でも容易に参画できる。地方自治体等と共同して、このようなドローン観測を全国各地の海岸で実施し、その結果を我々のサーバ上に転送した後、画像解析を施すシステムを構築すれば、自治体などが精度良く海ごみ漂着量をモニターできるようになるだけでなく、今まで知ることができなかった全国的な漂着ごみ現存量を推定することも可能となるだろう。