[MIS30-06] 沿岸域における発泡スチロール製マイクロプラスチックの動態推定
キーワード:発泡スチロール、漁業、沈降要因
マイクロプラスチック(0.3-5mm)は、海面や海中を漂流,海岸に漂着,あるいは海底に沈降している。Matsuguma et al. (2017)によると、東京湾の海底におけるマイクロプラスチック数密度は、海面に比べて1×104倍大きい。ゆえに、沿岸域でのマイクロプラスチックの動態解明において、沈降過程は重要なプロセスであることが示唆された。しかし、沈降要因や沈降フラックスなどの沈降過程は解明されていない。沈降過程の解明には、まず、沿岸域におけるマイクロプラスチック汚染の広がりを把握する必要があると考える。そのためには、レザバーとなる海面,海中,海底,海岸,あるいは生態系におけるマイクロプラスチックの分布を把握する必要がある。さらに、レザバー間のやり取りであるフラックスも見積もらなくてはならない(Hardesty et al., 2017)。マイクロプラスチックの振る舞いはサイズに依存することが報告されており(Isobe et al., 2014; Hinata et al., 2017)、各レザバーにおけるマイクロプラスチックの存在量及びサイズを調査することは、フラックスの算出に貢献すると考えられる。
本研究では、広島湾における海岸,海面,海底でのマイクロプラスチックの存在量及びサイズ,ポリマーの種類を調査した。また、海岸及び海底の発泡スチロール(FPS)製マイクロプラスチックの形状や表面及び内部構造を、デジタルマイクロスコープ及び電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM),X線CT画像を用いて観察した。それにより、FPS製マイクロプラスチックの微細化過程や沈降要因を推察した。
広島湾ではカキ養殖筏が点在しており、養殖生簀の浮きとして使用されるFPS製ブイを発生源とするマイクロプラスチックが海岸に多数漂着している(藤枝・佐々木,2005)。本研究では、海岸及び海底では約80%以上がFPSであり、数密度は海面に比べて1×103~1×107倍大きくなっていた。ゆえに、FPSによる深刻なマイクロプラスチック汚染は、海岸だけでなく海底にまで拡大していることが考えられる。
海面から採取したマイクロプラスチックは、海岸及び海底と異なるポリマーの割合を示しており、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が約60%を占めていた。これは、ポリマーの比重の違いが原因であると考えられる。FPSは内部に気泡を持ち、他のポリマーよりも比重がはるかに小さい。それにより、FPSは海面上で輸送され、風や表層残差流,ストークスドリフトなどに相対的に影響を受けやすいことが考えられる(Isobe et al., 2014)。ゆえに、海面を漂流する時間は短く、速やかに海岸に漂着し、一旦漂着すると再漂流しにくいことが考えられる(Hinata et al., 2017)。
海底で採取されたFPSの平均サイズは、海岸に比べて有意に小さいことがわかった。FPSが沈降するためには、サイズが小さくなる必要があり、特に2mm以下になると選択的に沈降している可能性が考えられる。ここで、海岸及び海底のFPS製マイクロプラスチックの形状を比較した。FE-SEM画像より、マイクロあるいはナノサイズのプラスチック粒子が、より大きなマイクロサイズのFPS粒子の端から、大量に生成している可能性が考えられた。また、海底のFPSは気泡が潰れ、複雑な形状をしていた。その複雑な形状から、海底のFPSの比表面積(単位体積当たりの表面積)は、海岸から採取したFPS粒子の比表面積に比べ、かなり大きいことが考えられる。またCT画像では、海底のFPS内に、外側から内側に向かって気泡が連なり、トンネルのような構造が存在した。ゆえに、海底のFPSは複雑な形状から比表面積が大きくなり、バイオフィルムや土粒子の影響を受けやすく、それらが沈降要因であると推察される。
本研究では、広島湾における3つのレザバー(海岸、海面、海底)でのマイクロプラスチックの存在量及びサイズ、ポリマーの種類を調査した。その結果、以下の可能性が考えられる。海面を漂流するFPSは風や表層残差流などにより、速やかに海岸に漂着し、一旦漂着すると再漂流しにくい。その過程で、より大きなFPSの端から、より小さいFPS粒子が生成する。生成したFPS粒子は劣化して気泡が連結し、複雑な形状となり、比表面積が大きくなる。それにより、バイオフィルムや土粒子の影響を受けやすく、特に2mm以下になると選択的に沈降する。しかし、本研究では、調査地点間の存在量やサイズの空間分布については議論していない。今後は、3次元数値シミュレーションを行うことで、滞留時間やレザバー間のフラックスを見積もる必要がある。
本研究では、広島湾における海岸,海面,海底でのマイクロプラスチックの存在量及びサイズ,ポリマーの種類を調査した。また、海岸及び海底の発泡スチロール(FPS)製マイクロプラスチックの形状や表面及び内部構造を、デジタルマイクロスコープ及び電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM),X線CT画像を用いて観察した。それにより、FPS製マイクロプラスチックの微細化過程や沈降要因を推察した。
広島湾ではカキ養殖筏が点在しており、養殖生簀の浮きとして使用されるFPS製ブイを発生源とするマイクロプラスチックが海岸に多数漂着している(藤枝・佐々木,2005)。本研究では、海岸及び海底では約80%以上がFPSであり、数密度は海面に比べて1×103~1×107倍大きくなっていた。ゆえに、FPSによる深刻なマイクロプラスチック汚染は、海岸だけでなく海底にまで拡大していることが考えられる。
海面から採取したマイクロプラスチックは、海岸及び海底と異なるポリマーの割合を示しており、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)が約60%を占めていた。これは、ポリマーの比重の違いが原因であると考えられる。FPSは内部に気泡を持ち、他のポリマーよりも比重がはるかに小さい。それにより、FPSは海面上で輸送され、風や表層残差流,ストークスドリフトなどに相対的に影響を受けやすいことが考えられる(Isobe et al., 2014)。ゆえに、海面を漂流する時間は短く、速やかに海岸に漂着し、一旦漂着すると再漂流しにくいことが考えられる(Hinata et al., 2017)。
海底で採取されたFPSの平均サイズは、海岸に比べて有意に小さいことがわかった。FPSが沈降するためには、サイズが小さくなる必要があり、特に2mm以下になると選択的に沈降している可能性が考えられる。ここで、海岸及び海底のFPS製マイクロプラスチックの形状を比較した。FE-SEM画像より、マイクロあるいはナノサイズのプラスチック粒子が、より大きなマイクロサイズのFPS粒子の端から、大量に生成している可能性が考えられた。また、海底のFPSは気泡が潰れ、複雑な形状をしていた。その複雑な形状から、海底のFPSの比表面積(単位体積当たりの表面積)は、海岸から採取したFPS粒子の比表面積に比べ、かなり大きいことが考えられる。またCT画像では、海底のFPS内に、外側から内側に向かって気泡が連なり、トンネルのような構造が存在した。ゆえに、海底のFPSは複雑な形状から比表面積が大きくなり、バイオフィルムや土粒子の影響を受けやすく、それらが沈降要因であると推察される。
本研究では、広島湾における3つのレザバー(海岸、海面、海底)でのマイクロプラスチックの存在量及びサイズ、ポリマーの種類を調査した。その結果、以下の可能性が考えられる。海面を漂流するFPSは風や表層残差流などにより、速やかに海岸に漂着し、一旦漂着すると再漂流しにくい。その過程で、より大きなFPSの端から、より小さいFPS粒子が生成する。生成したFPS粒子は劣化して気泡が連結し、複雑な形状となり、比表面積が大きくなる。それにより、バイオフィルムや土粒子の影響を受けやすく、特に2mm以下になると選択的に沈降する。しかし、本研究では、調査地点間の存在量やサイズの空間分布については議論していない。今後は、3次元数値シミュレーションを行うことで、滞留時間やレザバー間のフラックスを見積もる必要がある。