JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS30] 地球科学としての海洋プラスチック

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)

[MIS30-07] 生物過程を考慮した海洋浮遊マイクロプラスチックの鉛直輸送に関する数値実験

*吉武 珠穂1磯辺 篤彦1 (1.九州大学)

キーワード:海洋マイクロプラスチック、鉛直輸送、生物凝集

粒子サイズ5mm以下のマイクロプラスチックが世界中で観測されている。これによる海洋生態系への影響を評価するために、マイクロプラスチックの定量・分布を調べる必要がある。先行研究から、海に存在するマイクロプラスチックの多くが海面付近に集中していると考えられてきたが、簡単に分解するはずのないマイクロプラスチックが海面付近の観測結果だけでは説明できないというMissing plasticsの問題や、海底でもマイクロプラスチックが発見されたことなどから、水平方向の分布だけでなく鉛直方向の分布の解明が求められている。
本研究は物理的要因と生物過程によるマイクロプラスチックの鉛直輸送をモデルで再現することを目的としている。先行研究から、物理的要因としては風波に伴う乱流混合と粒子に働く浮力を、生物過程の再現としては植物プランクトンによる粒子の取り込みと、比重の増加による沈降を考慮したモデルの作成を試みた。
物理的要因のみを考慮したモデルでは、マイクロプラスチックの粒径がニューストンネット等で捕集可能な300μmから5mmの大きさである場合、観測結果と類似した海面付近での粒径分布を再現することができた。また、海面から深さ5mまで採集した観測結果と比較して、この粒径の範囲であればほとんどのマイクロプラスチックを捕集できることが分かった。一方で、300μmより小さいマイクロプラスチックの鉛直分布をモデルで再現したところ、粒径が100μm以下になると観測結果との整合性が保証されなくなった。故に、物理的要因のみを考慮したモデルでは粒径が100μmより大きな粒子の鉛直分布を再現することはできるが、それ以下のマイクロプラスチックについては、生物過程によって深層まで輸送されていると考え、生物過程を再現するモデルの作成を試みた。
講演では、上記の生物過程を導入したモデルによって、マイクロプラスチックの鉛直分布の再現を試みた結果を紹介する。