JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS30] 地球科学としての海洋プラスチック

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)

[MIS30-09] 相模湾、日本海溝プレート三重会合点、伊豆・小笠原海溝および太平洋深海平原の表層堆積物の特徴:マイクロプラスチックが深海堆積物に埋没する過程の理解にむけて

*小栗 一将1土屋 正史1川村 喜一郎2村山 雅史3矢吹 彬憲1前田 洋作1野牧 秀隆1川口 慎介1中村 明夢2千葉 早苗1 (1.国立研究開発法人海洋研究開発機構、2.山口大学、3.高知大学)

キーワード:堆積物、マイクロプラスチック、海溝、深海平原、相模湾

【はじめに】海洋に流出したプラスチックは微細化してマイクロプラスチックとなり、その一部は海底に到達し堆積物に埋没する。本研究は、プラスチックが多く存在すると考えられる、都市外縁の半遠洋性海域から海溝、さらには深海平原に至る環境中において、マイクロプラスチックが移動・分散・集積・堆積物中に埋没する過程を明らかにする第一歩として、モデル海域として定めた相模湾から海溝域・そして太平洋深海平原の水深755m~9232mから採取した複数の堆積物の構造を調べ、堆積物の形成過程を明らかにすることを目的とする。
【方法】海洋研究開発機構の深海潜水調査船支援母船「よこすか」YK19-11航海および海底広域研究船「かいめい」KM19-07航海において、房総半島沖日本海溝プレート三重会合点(水深9218mと9232m、計2本)、伊豆・小笠原海溝(水深8201mから9202m、計3本)、これらの海溝の東側に位置する深海平原(水深5707mから5813m、計3本)、および相模湾(水深755mから1387m、計3本)より、不撹乱堆積物コアをそれぞれ得た。コアの採取には、マルチプルコアラー、「しんかい6500」によるプッシュコア採泥、そしてフリーフォールカメラシステムに取り付けた採泥器をそれぞれ使用した。得られた堆積物試料は、高知大学にてX線CT撮影を行い、精細な堆積構造を可視化した。この後、コアを半割し断面を写真撮影した。堆積物の一部は鉱物粒子や生物源粒子を観察するため、顕鏡用プレパラートを作成した。
【結果】房総半島沖日本海溝プレート三重会合点からの2本のコアは泥質で、堆積物表層にほぼ平行した密度の高い層が見られた。この層の堆積物粒子の粒径は大きく、乱泥流によって形成されたと考えられた。伊豆・小笠原海溝からのコアにも同様の構造が見られたが、水深8201mより得られたコアの深さ26~27cmには、浮遊性有孔虫殻を含む厚さ約1cmの砂層が見られた。深海平原からのコアも泥質であったが、海溝堆積物よりも締まっており、生痕が多く見られた。相模湾からの堆積物は海溝や深海平原のものよりも粒径が荒く、構造もほぼ均質であり活発な混合が示唆された。湾央部から得られたコアの上部には、薄い高密度な層が見られた。これらのことより、堆積物の構造は、採取された海底地形によって異なった特徴があり、堆積構造の形成や混合といった堆積過程も大きく異なると推測される。