JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS30] 地球科学としての海洋プラスチック

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)

[MIS30-11] 東京湾堆積物におけるマイクロプラスチックの濃度

*王 業浩1中野 知香1荒川 久幸1 (1.東京海洋大学)

キーワード:マイクロプラスチック、堆積物、東京湾

1961年から2017年までの間に海洋に流出した廃プラスチックの量は、2140万トンと推定されている。このうち47.4%にあたる1086万トンは、直径5㎜以下のプラスチック片(マイクロプラスチック、以下MPs)として存在していると考えられている(Lebreton et al., 2017)。また、海洋に蓄積されたMPsのうち約27%のMPsは回収しかいない、先行研究から、73%未確認MPsの集積先の一つとして海底への沈降および堆積が指摘されている(Matsuguma et al., 2017)。

堆積物中のMPsは低次生態系に取り込まれ、なんらかの影響を及ぼす可能性が示唆されている(e.g. Galloway et al., 2017)。この影響はい まだ不明であり、MPsの適切な影響評価のためには、MPsの汚染状況を把握することが重要である。特に、低次生態系への影響が強いと考えられている350μm以下のMPsの実態把握が求められている。しかしながら、一般にプラスチック分析で使用されている分析機器(Attenuated Total reflection Fourie Transfer Infrared)の対象サイズが数百μmであることから、350μm以下のMPsに関する情報は依然として少ない。そこで本研究では、東京湾の堆積物における350μm以下の大きさのMPsの濃度を明らかにすることとした。

2019年5月9日と13日に、東京海洋大学練習船「青鷹丸」によって、東京湾内湾の三測点(Stn.2、Stn.3、Stn.4)で調査を行った。海底の堆積物は、エクマンバージ型採泥器を利用し採集した。

まず、採集した堆積物のサンプルをよく攪拌したのち10g秤量した。このサンプルに密度1.65g/cm3のヨウ化ナトリウム水溶液に入れた。上澄み液を回収することで、MPs粒子と鉱物粒子を分離した。次に、30%過酸化水素を20mlサンプルに加え、60℃で3日程度加熱することで、夾雑物を処理した。このサンプルを減圧ろ過により、PTFE製フィルターに捕集した。

サンプルの分析は顕微FTIR(日本分光IRT-7200)によって行った。測定されたスペクトルは事前に登録済みの標準プラスチックのスペクトル(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、エチレンーテレフタラート)と比較し、サンプル中の粒子の組成を判別した。また、MPsだと判断された粒子のサイズは、画像解析ソフトImage Jによって計測した。
検出したMPsは各測点で100 piece前後であった。この検出したMPsの種類は、ポリエチレンが約24.7%、ポリプロピレンが約27%、ポリスチレンが約4%、ポリ塩化ビニルが約5.3%、ポリアミドが約12.3%であった。含水率から求めた乾重量によって、各測点での濃度は、35 pieces/g-dry前後であり、東京湾水道1.8~5.3 pieces/g-dry(Matsuguma et al. 2017)よりも多かった。
ポリスチレン、ポリ塩化ビニルなどの重たいMPsは約72%が東京湾北側に位置するStn.2に集中していた。この結果から、ポリスチレンとポリ塩化ビニルなどの重たいMPsは東京湾の北側で沈降しやすいことが考えられた。各測点の平均粒子径は40.1、39.3、31.1㎛であった。また、軽いMPsであるポリエチレンとポリプロピレンについて、0~60μmが全体の50%以上を占めていた。