JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS30] 地球科学としての海洋プラスチック

コンビーナ:磯辺 篤彦(九州大学応用力学研究所)、川村 喜一郎(山口大学)、岡崎 裕典(九州大学大学院理学研究院地球惑星科学部門)、土屋 正史(国立研究開発法人海洋研究開発機構 地球環境部門)

[MIS30-P04] モンゴル都市河川の底質中に存在するマイクロプラスチックの特徴

*川東 正幸1バットトゥルガ バットドゥラム1 (1.首都大学東京)

キーワード:河床堆積物、都市河川、プラスチックゴミ、沈降

意図せずに環境中に放出されたプラスチックゴミはさらに断片化し,都市河川を経て現在のマイクロプラスチックによる海洋汚染を引き起こしている。断片化したプラスチックは移動中にさらに懸濁粒子や有機物と反応し,そのサイズ,表面特性や比重を変化させながら河川中を移動する。水よりも軽い密度のプラスチックもこの反応過程を経て河床堆積物中に集積する。本研究ではバイカル湖に通じるセレンゲ河水系において首都ウランバートルを集水域に含む都市河川のトール河を対象に河床堆積物中のプラスチック組成について評価した。

試料採取地はウランバートル市街地の南部を流れるトール河に沿って,市街地の影響が少ない上流域から市街地の排水流入口および下流域の排水処理施設までに6カ所設定した。砂質な河床堆積物を深さ5㎝まで採取した。採取した堆積物は大気からの粉塵の混入に留意しながら風乾し,粒径に応じてフルイで篩別し3画分を得た。各堆積物画分は硫酸鉄を混和した過酸化水素処理によって有機物を分解した。さらに,ポリタングステン酸ナトリウムを用いた比重分画によって堆積物とプラスチックを分別した。フィルターに捕獲したプラスチック片をデジタルマイクロスコープによる観察で形態およびサイズを記録した。また,顕微赤外分光分析によりプラスチックを同定した。

堆積物中の主たるプラスチック形態は繊維状であり,フィルム状,断片状,フォーム状の各プラスチックも多く検出された。これらの各形態のプラスチックはサイズ分布を持っており,繊維状以外のプラスチックでは150μmが最頻値であり,比較的狭いサイズ分布を示したことに対して,繊維状は広いサイズ分布を示した。フォーム状プラスチックは河川水および河岸では高い割合で認められたが,堆積物中では少なく,内部に空洞が多く比重が軽いことが影響していると考えられた。このような比重が軽いプラスチックが堆積物中に認められることは稀ではなく,付着した有機物や懸濁粒子が相対的な比重を大きくし,沈降させる過程が考えられた。また,堆積物の採取地に応じてマイクロプラスチックの分布する粒径画分に違いが認められた。すなわち,下水処理場付近では粗粒質な堆積物中にも多くプラスチックが認められたことは,上流域の堆積物と異なっていた。都市域での土地利用がプラスチックの分布に影響していることが考えられた。