JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS31] 惑星火山学

コンビーナ:野口 里奈(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、諸田 智克(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[MIS31-04] 月火星の溶岩チューブとその探査

*春山 純一1大野 匠1,2三宅 亙2熊本 篤志3 (1.宇宙航空研究開発機構、2.東海大学、3.東北大学)

キーワード:溶岩チューブ、月、火星、火成活動、探査

月に、直径、深さともに数10mにもなる縦孔が、日本の月探査機セレーネ(かぐや)によって発見されている。縦孔の底のLunar Reconnaissance Orbiter (LRO)搭載の高解像度画像から、縦孔底は通常のクレータのようなお椀型になっていないことが分かっている。このような縦孔は地下の溶岩チューブのような空間が存在しているところに隕石が衝突し生じたと考えるのが妥当である。実際、斜め観測や、重力場データ、更にはRadar Sounderのエコーデータから、月の溶岩チューブの存在はほぼ確実である。
 月と同様の縦孔は、火星にも発見されている。その形態から、火星の縦孔も溶岩チューブに開いたものと考えられる。すでに火星では発見された縦孔の数は、50以上にも上り、最初に発見されたアルシア山の麓の他、かつて海に囲まれていたとされるエリシウム山にも、多数見つかっている。我々は最近、Mars Reconnaissance Orbiter (MRO)のレーダサウンダーデータからも、壊れていない溶岩チューブの存在を確認しつつある。
 惑星科学の目的でもある「生命圏」の起源と進化、維持を決定づける要素は、多種多様にあるが、地球のような固体天体でも最も中で重要な要素の一つは「火成活動」である。 火成活動は、地表面はもちろん、大気、更には深海にさえ物質・エネルギーの再分配をもたらし、環境に大小様々な規模の変動をもたらす。言い換えると、環境変動に敏感な「生命圏」の変化を理解するには「火成活動の理解」が必須である。我々は、「溶岩チューブ」の探査から、「火成活動」に関わる重要な情報が得られると考えている。
火成活動が大規模、広範囲になれば、より多くの生態系へと影響し、「生命圏」の激変を生むことにもなるが、溶岩チューブの形成は、溶岩の長距離輸送を可能にし、火成活動の影響を広範囲に広げることから、溶岩チューブの形成は、火成活動そのものだけでなく、生命圏への火成活動への影響、という点で重要な因子であると考えている。また、溶岩チューブのサイズや形状等からは溶岩流の物理的諸量が求まり、それらは、たとえば溶岩流の温度などの噴出情報を知る手がかりとなる。こうした溶岩噴出情報によって、天体の火成活動によるエネルギー再分配や水を含む揮発性物質やダストの放出等によるに環境変動の可能性に関わる知見が高まり、ひいては「生命圏」がどのように生まれ、その後、進化維持、あるいは破壊されたかの理解においても重要な情報を与えることが期待される。
 我々は、こうした月火星の溶岩チューブに関する探査を検討している。この計画はUnprecedented Zipangu Underworld of the Moon/Mars Explorationと名付けられている。
本講演では、最近、我々の得ている月や火星の溶岩チューブの知見を紹介し、その探査の惑星火山学的意義について議論を行う。