JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS31] 惑星火山学

コンビーナ:野口 里奈(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、諸田 智克(東京大学理学系研究科地球惑星科学専攻)、下司 信夫(産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門)

[MIS31-P03] ひさき衛星とALMAで観測されたイオの火山活動と大気・イオプラズマトーラスの関係

*古賀 亮一1平原 靖大2鈴木 達也2土屋 史紀1鍵谷 将人1坂野井 健1木村 智樹1吉川 一朗3吉岡 和夫3村上 豪4山崎 敦4 (1.東北大学、2.名古屋大学、3.東京大学、4.宇宙科学研究所)

キーワード:惑星火山活動、木星衛星イオ、大気、イオプラズマトーラス

本研究は火山活動が木星衛星イオ大気に与える影響を理解することを目的とした。イオの大気はとても薄く(数nbar)、SO2が90%を占めている。大気上層の酸素や硫黄原子は散逸してイオン化することで、イオ軌道周辺にイオプラズマトーラスと呼ばれる構造を生み出す。イオの火山活動は次の二つのタイプが考えられる。一つ目はEffusive eruptionであり、溶岩が火山から吹きだして表面に流れるタイプで、Effusive eruptionと呼ばれる。もう一つはExplosive eruptionであり、火口下のマグマ中に突然気泡ができ、火口からSO2を豊富に含んだガスを噴き出す(プルーム)タイプで、Explosive eruptionと呼ばれる。LokiやPeleのような強力な火山では、溶岩の吹き出しにしばしばプルームを伴うことがある。しかし、どちらの噴火のタイプがイオの大気やイオプラズマトーラスの分布を変えるほどのガスを放出するかはいまだに明らかにされていない。

私たちは、2018年3月20日のALMA (Atacama Large Millimeter/Submillimeter Array)による電波観測(~332-346 GHz)アーカイブデータを解析し、木星の陰にイオが入る(Ingress)前と後のSO2大気の空間分布や速度分布を明らかにした。その結果、私たちは火山噴火によるガス放出が起こっていると思われる領域を東側の北半球高緯度(Volcano 1)と西側の赤道周辺(Volcano 2)に発見した。Volcano 1の速度分布から高速成分と低速成分を検出した。高速成分は低速成分に比べて0.6 km/s赤方側にドップラーシフトしていた。この結果はVolcano 1の中で大きなプルームが複雑な大気の運動を発生させ、SO2のガスを大気上部に供給していることを示唆している。一方、Volcano 2の速度分布から高速の大気成分を検出できなかった。しかし、Ingress後のSO2大気の回転励起温度が311±41 Kであることが分かった。この温度は通常の昇華大気の温度(約100 – 200 K)より大きい。この温度はVolcano 2で溶岩の火口で放出された低速のガスや溶岩で温められた大気温度を反映していると考えられる。
私たちはさらにALMAの観測と同時期に、紫外線分光器を搭載したひさき衛星でdusk側のイオプラズマトーラスの増光を観測した。この結果はSO2ガスの火口からの直接噴出がイオプラズマトーラスの密度の増加を引き起こしていることを示唆している。私たちはEffusive eruptionとExplosive eruptionで放出されたと考えられるガスを観測した。しかし、どちらの噴火がイオプラズマトーラスの増加に寄与するかを明らかにするには、さらなるひさきと地上望遠鏡の観測が必要である。