JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS32] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

コンビーナ:戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学)、後藤 秀作(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、谷 篤史(神戸大学 大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻)

[MIS32-07] 氷天体の内部海を守るガスハイドレート

★招待講演

*鎌田 俊一1 (1.北海道大学 理学研究院)

キーワード:内部海、ガスハイドレート、アストロバイオロジー

氷天体の内部海は、アストロバイオロジーの観点で最も興味深い研究対象の一つである。その存在は木星の氷衛星エウロパや土星の氷衛星エンセラダス、そして氷準惑星の冥王星など、様々な外側太陽系天体に示唆されている。内部海で生命が育まれるためには、長い期間に渡って海が凍らないことが大前提である。これまでの理論研究からは、内部海が凍らないためには、潮汐などにより内部で十分な発熱が起きているか、海に溶け込んだ大量の不純物によって大きな凝固点降下が起きているか、のどちらかが必要であると考えられてきた。しかしながら、どちらにしても冥王星の内部海存在は説明できないことが分かった。近年、我々は内部海を凍結から守る一般的なメカニズムを新たに発見した。それは、海上にガスハイドレートの層があれば、それは強力な断熱層の役割を果たす、というものである。これは単に冥王星の海の存在に理論的説明を与えるだけではなく、たとえ加熱の乏しい氷天体であっても条件次第では長期間内部海を維持できることを示している。すなわち、これまで考えられてきた以上に、長期間維持される内部海はたくさんあるであろうことを意味している。