JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-IS ジョイント

[M-IS32] ガスハイドレートと地球環境・資源科学

コンビーナ:戸丸 仁(千葉大学理学部地球科学科)、八久保 晶弘(北見工業大学)、後藤 秀作(産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門)、谷 篤史(神戸大学 大学院人間発達環境学研究科 人間環境学専攻)

[MIS32-P06] 日本海南部,大和海盆南西縁のメタンハイドレート胚胎特性

*石田 直人1藤岡 秀文2戸丸 仁3海老沼 孝郎1松本 良4 (1.鳥取大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻、2.鳥取県水産試験場、3.千葉大学理学部、4.明治大学ガスハイドレート研究所)

キーワード:表層型メタンハイドレート、大和海盆、日本海

大和海盆は日本海の南部,山陰から東北地方の沖合にかけて広がる海盆である.その南西縁にあたる隠岐海嶺と隠岐海脚に挟まれた海域は,経済産業省による表層型メタンハイドレートを対象とした広域地質調査が実施され,表層型メタンハイドレート分布域に特徴的な音響的ブランキングであるガスチムニー構造が確認されている.その後,明治大学ガスハイドレート研究所を主体とした学術調査に加え,鳥取県による海洋環境基礎調査が進められ,大和海盆南西縁から隠岐海嶺にかけてのガスチムニー群に対するサブボトムプロファイラー(SBP)による地下構造調査,ピストンコアラー・グラビティコアラーによるコア採取,地熱観測,間隙水分析等,多岐にわたる調査項目によって,この海域のメタンハイドレート胚胎特性が明らかにされつつある.

大和海盆の隠岐海嶺側斜面において,メタンハイドレート胚胎が予想されるマウンド群に対して取得したSBP地下構造断面には,数か所にマウンドに伴う幅数100 m規模のガスチムニー構造が確認でき,海底地形の変状を伴わない小規模なガスチムニー構造も識別できる.マウンドの頂部には激しい海底地形の凹凸を伴うポックマークも確認でき,これらはマウンド内部に集積したメタンハイドレートが自らの浮力で崩壊した痕跡の可能性がある.このマウンド群近傍の地温勾配は71.33 mK/m,水温鉛直分布と合わせて算出したBGHS深度は138.6 mbsfである.また,地温測定点で採取したコア試料の熱伝導率は0.82-0.88 W/m/Kの範囲にあり,地殻熱流量は60.71 mW/m2と求められた.

ガスチムニー構造を伴うマウンドの間隙水分析の結果,SMI深度は2.4 mbsf以浅と浅く,中には1 mbsfより浅い地点も存在する.また,回収されたコアには,海底下数10 cm~数 mに炭酸塩コンクリーションやムース状の泥が見られた.この海域のマウンドはメタンフラックスが大きく,海底近傍にメタンハイドレートが存在する可能性を強く示唆している.

大和海盆は,日本海の他の海域(上越沖や最上トラフ,隠岐トラフ)に比べ,メタンハイドレートの胚胎特性の調査は遅れている.しかし,ここ数年のうちに急速に知見が集積され,他の海域に比肩する表層型メタンハイドレート胚胎域であることが明らかになりつつあり,今後より一層の研究の進展が望まれる.