JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-SD 宇宙開発・地球観測

[M-SD47] 将来の衛星地球観測

コンビーナ:本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)、Shinichi Sobue(Japan Aerospace Exploration Agency)、金子 有紀(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)

[MSD47-02] 静止衛星搭載ハイパースペクトル赤外サウンダの観測システムシミュレーション実験

*大和田 浩美1岡本 幸三2計盛 正博1上清 直隆2石元 裕史2林 昌宏2 (1.気象庁、2.気象庁気象研究所)

キーワード:ひまわり、ハイパースペクトル赤外サウンダ、観測システムシミュレーション実験

気象庁では、静止気象衛星ひまわり8・9号に続く後継衛星の検討を開始した。ハイパースペクトル赤外サウンダ(HSS)は、後継衛星への搭載を検討している測器の候補の一つであり、これを利用することにより数値予報の予測精度が大幅に改善すると期待される。このため当庁では、昨年度から観測システムシミュレーション実験(OSSE)を行い、HSSを後継衛星に搭載した場合の数値予報へのインパクトの評価を行っている。

後継衛星搭載HSSの疑似観測データは、欧州で計画されているMTG衛星に搭載されるIRSを想定している。ECMWFの再解析(ERA5)を入力とし、放射伝達モデルRTTOV12.2によりシミュレーションを行い、輝度温度の疑似観測データを作成する。HSSの同化は晴天域のみで同化するため、雲判定が重要となる。当初は、前処理で行う雲域の判定には、現業利用されている極軌道衛星のHSSの品質管理処理を適用し、その結果晴天域と判定された全天候輝度温度を同化していた。しかし、全天候輝度温度の値は入力であるERA5の雲情報(雲量、雲水量、雲氷量)に大きく依存することから、本OSSEにおいては、実観測のための雲域の判定処理をそのまま利用することは適切でない可能性がある。そこで、RTTOVの別の出力である晴天輝度温度も利用し、各チャンネルにおいて晴天と全天候の輝度温度の差が小さいもの(差が1K未満)を晴天とし、晴天輝度温度を同化することにした。また、測器誤差はIRSの仕様書にあるNEdTの値に乱数(平均0、標準偏差1の正規分布を仮定)をかけた値とし、それをRTTOVの出力の晴天輝度温度に付加した値を同化している。

気象庁の現業全球データ同化システムを用いて、2018年8月の期間を対象とした実験を実施した。これはフルディスクの毎時観測を同化することを想定した実験である。実験結果は、疑似観測利用によるインパクトが明瞭であり、解析場と予測場がともに真値としたラジオゾンデ観測に近づいた。また、期間中に存在した台風(台風第10号から台風第21号)に対する台風進路予測誤差では、疑似観測の利用で改善が見られた。
現在までに、3時間ごとのフルディスク観測の同化、南半球のみ3時間観測(北半球は毎時観測)の同化など、様々な観測パターンを想定した場合の数値予報へのインパクトの違いを確認している。今後はそれらの結果をまとめ、本大会にて報告・議論するとともに、HSSの有効性の評価検討に活かしていきたい。