JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-SD 宇宙開発・地球観測

[M-SD47] 将来の衛星地球観測

コンビーナ:本多 嘉明(千葉大学環境リモートセンシング研究センター)、高薮 縁(東京大学 大気海洋研究所)、Shinichi Sobue(Japan Aerospace Exploration Agency)、金子 有紀(国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構)

[MSD47-07] 衛星搭載水蒸気観測用差分吸収ライダー(DIAL)の技術実証

*阿保 真1長澤 親生1柴田 泰邦1内野 修2柴田 隆3酒井 哲2 (1.東京都立大学、2.気象研究所、3.名古屋大学)

キーワード:水蒸気、差分吸収ライダー、衛星ライダー

気候システムにおいて水蒸気は中心的な役割を担っているが、その役割が十分解明されていないことが予測精度のばらつきに現れている。気候モデルの課題の1つは、水蒸気プロセスを正確に説明し、現実的な三次元放射、雲、降水をパラメータ化することである。これは、個々の対流スケール現象を予測する数値予報においても同様である。更に水蒸気は、地表面の放射バランスや大気の冷却速度のような重要な天気要素に直接影響を与える。また、近年気候変動の影響により日本では線状降水帯による豪雨の発生や台風の大型化が防災面から大きな社会問題となっている。これらの災害は事前の予測精度を上げることにより減災が可能であるが、これらの現象予測には、特に海上の下部対流圏の水蒸気分布情報が重要であることが指摘されている。衛星搭載水蒸気ライダーではゾンデやGPSなどの観測では不可能な日本周辺の海上での水蒸気観測が可能であり、衛星観測データを数値予報モデルに同化することにより予測精度の向上が期待できる。衛星搭載ライダーは単独でも高品質データによる数値予報の精度向上並びにそれに伴う天気予報精度(特に降雨予測)の飛躍的向上が期待できるとともに、他の赤外線やマイクロ波のパッシブリモートセンシング機器の校正、モデルのバイアス誤差の検出にも有効であり、衛星搭載のパッシブセンサーによる面的な観測とのシナジー効果が期待できる。

衛星搭載と対流圏界面高度の水蒸気量の観測を考慮した場合は、レーザの効率が良く、かつより吸収量の大きい1300nm付近の吸収線を利用した水蒸気測定用差分吸収ライダー(DIAL)を提案する。衛星搭載ライダーで技術的に最も困難なレーザ光源については、1.57μmCO2-DIALの技術で開発したQPM (Quasi Phase Matching) 結晶を用いたOPA (Optical Parametric Amplifier) システムの採用を提案する。OPAは、one path amplifierであり、通常の位相整合OPO (Optical Parametric Oscillator)より、制約条件が緩和されるため宇宙利用には有利である。高度250kmの低高度衛星から2ビームで測定を行う衛星搭載水蒸気DIALにより、水平分解能20km、高度分解能は高度2km以下300m、2km以上600mとし、夏季日本の水蒸気モデルを想定した場合、測定誤差のシミュレーションより高度3kmまで誤差10%以下で水蒸気の測定が可能である。また、3つの吸収線を用いることにより、水平分解能1000km、高度分解能1kmで熱帯領域の地表付近から高度22kmの下部成層圏までの水蒸気が、誤差10%以下で計測可能である。