JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT51] 地球化学の最前線

コンビーナ:橘 省吾(東京大学大学院理学系研究科宇宙惑星科学機構)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 高解像度環境解析研究センター)、鍵 裕之(東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設)

[MTT51-01] フォトンファクトリーにおける高分解能X線顕微鏡の現状と将来展望

★招待講演

*若林 大佑1 (1.高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所)

キーワード:X線顕微鏡、フレネルゾーンプレート、XAFS

フォトンファクトリー(PF)は、1982年のビーム発生以来、幅広い分野の研究者に高輝度のX線ビームを提供し続けてきた。放射光X線は、様々なエネルギーの光を含んでおり、分光器を操作することによって任意の波長を選択することができる。波長を変えながら行う分光イメージングは、試料中の元素量や価数、配位数などの空間分布を可視化する。したがって、放射光施設におけるX線顕微鏡を用いた分光イメージングは、地球化学分野でも広く用いられる手法となっている。PFにおいても、マイクロメートル~ナノメートルオーダーまで、様々な分解能のX線顕微鏡を備えたビームラインが整備されている。中でも、フレネルゾーンプレート(FZP)を用いた顕微鏡は、数10nmの高い空間分解能を誇り、多くのユーザーによって利用されている。
FZPを用いたX線顕微鏡は、大きく二つに大別される。一つは、FZPを集光素子として用いた顕微鏡で、走査型透過X線顕微鏡(STXM)はその典型である。FZPによって数10nmサイズまで集光された光を用いて、透過X線強度を測定しながら試料を走査することで像を得る。X線吸収微細構造分光(XAFS)イメージングを測定していることに相当し、炭素の官能基や遷移金属の価数のマッピングなどで、地球化学分野においても多く利用されている。PFでは、2018年にSTXM専用のビームラインBL-19の建設が行われ、2019年5月からユーザー利用が開始されている。もう一つは、FZPを結像素子として用いた顕微鏡である。単に透過X線顕微鏡(TXM)と呼ばれることが多いが、実際には結像型の顕微鏡を指している。試料像がカメラによって一度に得られるため、CTと組み合わせた三次元イメージングに適している。また、吸収以外のコントラスト(屈折率や位相)による測定モードへの変更が容易であるという魅力がある。PFでは、ビームラインAR-NW2Aにおいて、実際にXAFS-CTによる価数の三次元マップを得ることができている他、モードや倍率の変更を自在に行うことができる顕微鏡の開発が進められている。
講演では、PFにおけるFZPを用いたX線顕微鏡を実際の応用例とともに紹介するとともに、将来展望についても述べる。