JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-TT 計測技術・研究手法

[M-TT51] 地球化学の最前線

コンビーナ:橘 省吾(東京大学大学院理学系研究科宇宙惑星科学機構)、横山 祐典(東京大学 大気海洋研究所 高解像度環境解析研究センター)、鍵 裕之(東京大学大学院理学系研究科附属地殻化学実験施設)

[MTT51-P05] CO2 流体の非破壊δ13C 測定技術の確度向上

*横倉 伶奈1萩原 雄貴1山本 順司2 (1.北海道大学、2.北海道大学総合博物館)

キーワード:炭素同位体比、顕微ラマン分光分析、CO2流体、流体包有物

鉱物粒子中に閉じ込められたCO2流体の炭素同位体比を求める手法として,マイクロラマン分光法は有効な手段になりうる.その原理は非常に単純で,CO2ラマンスペクトルの13CO2のピークと12CO2のピークの強度比やエリア比が同位体比に相関することを利用している.しかし流体の圧力が異なる場合の同位体比測定に対する影響はこれまで明らかにされていない.圧力が一つ一つ異なる天然の流体包有物の同位体比の測定のためには,圧力の影響がどのように現れるかは重要である.そのため一定の同位体比のCO2流体の圧力を変化させた場合のラマン強度比とエリア比の圧力依存性を検証した.流体圧力を10 MPaから150 MPaに変化させると,強度比,エリア比ともに流体圧力との間に線形相関を示すことがわかった.しかしこの強度比やエリア比の変化は圧力変化に伴うCO2ラマンスペクトルのピーク位置変化に依存する可能性があるので,純粋なピーク位置への影響を評価した.測定中心位置を移動させ,一定のCO2圧力(10 MPa)で繰り返し強度比を測定した.しかし測定中心位置を1248.5cm-1から1251.5cm-1に移動させても、強度比、面積ともに有意な相関は見られなかった.よって強度比とエリア比が圧力に依存することが判明した.このような圧力依存性が存在しても,CO2の圧力測定が可能なら、圧力の影響を補正できる.すでに開発されているCO2のラマン分光圧力測定技術と組み合わせれば,その補正は容易である.結果,CO2ラマンスペクトルのピークの強度比とエリア比を用いた測定技術において,CO2圧力の差はδ13Cを解析するための障害とならず,より確度の高い測定が実現できることが判明した.