[MZZ53-01] 温泉付随ガスの有効利活用に向けた研究:北海道豊富町におけるケーススタディ
キーワード:温泉付随ガス、環境性、経済性、ライフサイクルアセスメント
温泉を汲み上げる際、温泉水に付随して湧出するガスを温泉付随ガスと呼ぶ。温泉付随ガスは主にN₂型、CH₄型、CO₂型 に大別され、日本各地の温泉から湧出している。この中でも特にCH₄は都市ガスの原料にもなる有用な地域資源である一方、地球温暖化係数がCO₂の28倍の温室効果ガス(GHG)である。ところが全国的に温泉付随ガスの有効利活用に関する研究や事例は少ない。北海道は源泉数が全国4位であり、温泉付随ガスの組成分布や湧出量に関する調査が精力的に進められている。また、2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震によるブラックアウト被害から、災害に対応した地域分散型安定電源への関心が高まっている。
これらの現状を踏まえ、本研究では温泉付随ガスの利活用価値を検討するため、北海道豊富町を対象として、(1)既存設備と新規設備としてコージェネレーションシステム(CGS)の導入を比較した場合、(2)同一設備の燃料として温泉付随ガスと液化石油ガス(LPG) を比較した場合、(3)現状とCGS最大限導入を比較した場合の3つのケースについて環境性と経済性の比較を試みた。
評価にはライフサイクルアセスメント(LCA)手法を用いた。特に環境性の評価には環境影響評価手法であるLIME2を用いてGHG排出量を見積もり、経済性の評価にはフルコスト評価を用いてコストを見積もった。温泉付随ガス湧出量やガス成分、CGS製造・使用時に投入した資源・エネルギー量のデータは豊富町役場や関連企業への聞き取り調査により取得し、使用時のエネルギー消費量及び温泉付随ガスの大気放散に伴うGHG排出量は温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル(Ver4.4)を参照した。また、製品の原材料の生産と廃棄段階のGHG排出量については、LCAシステムMiLCA ver2.2.1 及びLCIデータベース IDEA version 2.2を用いて算出した。一部は類似する素材や製品のデータで代用するとともに、質量が小さいなど寄与が十分に小さいと判断される素材や部品はカットオフした。コストの見積もりに際しては、導入から使用・廃棄までのデータをそれぞれの使用企業・団体への聞き取り調査を通じて取得した。
その結果、温泉付随ガス湧出地域でCGSを新規に導入する場合、GHG排出量及びコストの両方において大きく削減できることが分かった。また、LPG使用地域において温泉付随ガスへと燃料の転換を行うことで、GHG排出量及びコストの両方において大きく削減できることが分かった。さらに、現状に対してCGSを最大限導入した場合も、GHG排出量及びコストが大幅に削減されることが分かった。
これらのコストについて、本研究では環境コストという形でカーボンプライシングを行ったために経済性のある結果となったが、日本におけるカーボンプライシングの一つである地球温暖化対策税は本研究で用いた値の約1/8であり、他の指標に比べても著しく低いことが分かる。今後、温泉付随ガスの有効利活用を推進していくためには、法規制等の緩和に加え、政府主導での導入促進の取り組みや災害対応自立型エネルギーなどの付加価値の付与が重要と考えられる。
これらの現状を踏まえ、本研究では温泉付随ガスの利活用価値を検討するため、北海道豊富町を対象として、(1)既存設備と新規設備としてコージェネレーションシステム(CGS)の導入を比較した場合、(2)同一設備の燃料として温泉付随ガスと液化石油ガス(LPG) を比較した場合、(3)現状とCGS最大限導入を比較した場合の3つのケースについて環境性と経済性の比較を試みた。
評価にはライフサイクルアセスメント(LCA)手法を用いた。特に環境性の評価には環境影響評価手法であるLIME2を用いてGHG排出量を見積もり、経済性の評価にはフルコスト評価を用いてコストを見積もった。温泉付随ガス湧出量やガス成分、CGS製造・使用時に投入した資源・エネルギー量のデータは豊富町役場や関連企業への聞き取り調査により取得し、使用時のエネルギー消費量及び温泉付随ガスの大気放散に伴うGHG排出量は温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル(Ver4.4)を参照した。また、製品の原材料の生産と廃棄段階のGHG排出量については、LCAシステムMiLCA ver2.2.1 及びLCIデータベース IDEA version 2.2を用いて算出した。一部は類似する素材や製品のデータで代用するとともに、質量が小さいなど寄与が十分に小さいと判断される素材や部品はカットオフした。コストの見積もりに際しては、導入から使用・廃棄までのデータをそれぞれの使用企業・団体への聞き取り調査を通じて取得した。
その結果、温泉付随ガス湧出地域でCGSを新規に導入する場合、GHG排出量及びコストの両方において大きく削減できることが分かった。また、LPG使用地域において温泉付随ガスへと燃料の転換を行うことで、GHG排出量及びコストの両方において大きく削減できることが分かった。さらに、現状に対してCGSを最大限導入した場合も、GHG排出量及びコストが大幅に削減されることが分かった。
これらのコストについて、本研究では環境コストという形でカーボンプライシングを行ったために経済性のある結果となったが、日本におけるカーボンプライシングの一つである地球温暖化対策税は本研究で用いた値の約1/8であり、他の指標に比べても著しく低いことが分かる。今後、温泉付随ガスの有効利活用を推進していくためには、法規制等の緩和に加え、政府主導での導入促進の取り組みや災害対応自立型エネルギーなどの付加価値の付与が重要と考えられる。