JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ55] 文化地質学

コンビーナ:鈴木 寿志(大谷大学)、先山 徹(NPO法人地球年代学ネットワーク 地球史研究所)、高橋 直樹(千葉県立中央博物館)

[MZZ55-P05] 大分県北部の山岳霊場としての岩窟付近の地形・地質

*川村 教一1 (1.兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)

キーワード:宗教、岩窟、火砕岩

演者は、大分県国東半島の、大分県宇佐市、豊後高田市、国東市、杵築市に分布する「六郷満山」(神社・寺院の総称)に関連する山岳霊場分布域の地形・地質学的環境を予察的に検討してきた。同地域における調査を継続してデータを蓄積するとともに、国東半島の西方の中津市に分布する山岳霊場についても現地調査を行った。このうち、岩窟の分布域の特徴として、次のことが明らかになった。

国東半島中心部から山麓に向けて多数の開析谷が放射状に伸び、半島北部ではいわゆる「耶馬溪式景観」あるいは「耶馬渓式風景」と呼ばれるバッドランド地形が見られる。これは、両子火山群周辺の凝灰角礫岩類の選択侵食によると言われている。

霊場としての岩窟(あるいは岩屋)は、国東半島北部の国東市国見町千燈付近では、垂直に発達した凝灰角礫岩類の岩壁側面にしばしば見られ、分布標高は100~300m強の範囲である(妙見岩屋、尻付岩屋、大不動岩屋、大藤岩屋ほか)。豊後高田市空木や田染真中でも同様の地形・地質である(大山岩屋観音;間戸岩屋:穴井戸観音、朝日観音、夕日観音)。東半島西方の宇佐市安心院町竜王(大巌寺)、同市黒(天福寺奥の院)、同市院内町大門(龍岩寺)、中津市野地平(猪川内岩屋堂)、同市本耶馬渓町帯岩(妙見窟ほか)、同市本耶馬渓町跡田(羅漢寺、古羅漢)でも垂直に発達した凝灰角礫岩類の岩壁側面に岩窟が設けられている。そのほか、国東半島の開析谷沿いの標高50m~70付近に岩窟(堀岩屋、十王岩屋)、宇佐市高栖(鷹須観音堂)が山岳地帯ではなく集落域にあるもので、参考までに挙げておく。

以上のように、国東半島付近と西方中津市の山岳霊場では、岩窟は凝灰角礫岩類から構成されるバッドランド地形にある岩壁の側面に分布している(十王岩屋を除く)。
国東半島西部では豊後高田市の西叡山周辺にも山岳霊場としての行場があり、これらについて調査がなお必要である。