JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 M (領域外・複数領域) » M-ZZ その他

[M-ZZ57] 海底マンガン鉱床の生成環境と探査・開発

コンビーナ:臼井 朗(高知大学海洋コア総合研究センター)、高橋 嘉夫(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、鈴木 勝彦(国立研究開発法人海洋研究開発機構・海底資源センター)、伊藤 孝(茨城大学教育学部)

[MZZ57-P01] コバルトリッチクラスト国際鉱区における堆積物の特性

*山岡 香子1鈴木 淳1太田 雄貴1田中 裕一郎1嶋本 晶文2福原 達雄2湊谷 純平3加藤 正悟3五十嵐 吉昭3岡本 信行3 (1.産業技術総合研究所地質情報研究部門、2.株式会社環境総合テクノス、3.独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

キーワード:海山、堆積物、酸化還元

南鳥島南東沖のコバルトリッチクラスト国際鉱区における環境ベースライン調査の一環として、これまでに6つの海山のうち5つ(JA02, JA03, JA04, JA06, JA17海山)から表層堆積物コアを取得し、堆積物の物性及び化学組成を調べた。いくつかのコアにおいては、マイクロセンサを用いた間隙水の溶存酸素(DO), pH, 酸化還元電位(ORP)測定も実施した。全ての海山平頂部(水深1,300–1,500 m)から得られた堆積物は、いずれも炭酸塩生物殻(有孔虫及び円石藻)を主体とする石灰質軟泥であり、亜熱帯海域における生物生産群集及び平頂部水深がCCDより浅いことと調和的である。平頂部堆積物の密度は2.6–2.7 g/cm3、含水率は約50%で、海山ごとの違いは見られなかった。一方、粒度組成は海山によって異なり、JA03, JA06, JA17海山における中央粒径は10–60 µmであったが、JA02及びJA04海山の中央粒径は100–350 µmと、やや粗い特徴を示した。平頂部堆積物の化学組成は、炭酸カルシウム含有量が90%以上を占め、非常に低い全有機炭素(<0.15%)、全窒素(<0.03%)、生物源オパール(<0.9%)含有量で特徴付けられた。全有機炭素、全窒素、生物源オパールは深度と共に減少し、間隙水中のDO低下と同調的であった。JA03海山基部2地点及びJA06海山基部3地点からは、深海底(水深4,000–5,000 m)の表層堆積物が採取された。基部堆積物は、珪質軟泥であったJA06海山1地点を除き、遠洋性粘土で構成されていた。珪質軟泥の物性は遠洋性軟泥とは大きく異なり、低い密度、高い含水率、大きな中央粒径を示した。基部堆積物における全有機炭素、全窒素は、平頂部堆積物に比べるとやや高いものの、貧栄養海域であることを反映して、それぞれ最大でも0.4%、0.08%程度であった。C/N比は深度と共に減少し、粘土鉱物によるアンモニアや有機窒素化合物の吸着保持が示唆される。JA03海山基部の堆積物上には直径2–5 cmの大きなマンガンノジュールが見られ、一方、JA06海山基部の堆積物上には直径1 cm程度の小さいマンガンノジュールが認められた。間隙水中のDOは、JA03海山基部の堆積物では深度7 cmまでほぼ一定であったのに対し、JA06海山基部の堆積物では表層2 cm以内で急激に低下した。酸化還元に敏感なマンガンについてみてみると、JA03海山基部の堆積物中マンガン濃度は0.3–0.4%で深度変化は見られないが、JA06海山基部ではマンガンは堆積物表層に最大4.6%まで濃集しており、深度と共に減少した。さらに、マンガン酸化物に濃集する金属元素であるCo, Ni, Cu, Zn, Cdも、Mnと同調的な深度分布を示した。JA03海山基部のマンガンノジュールは海水起源の特徴を示し、観察された酸化的な堆積環境と調和的である。一方、JA06海山基部の堆積物は、続成起源のマンガンノジュールが成長しやすい弱還元的な環境であると考えられる。