[O04-P25] 天気予測おける天体観望と水蒸気の関係について
キーワード:天気予測、天体観望、水蒸気
1.動機・目的
天体観測において妨げとなる要因の一つに水蒸気がある。その事を逆手に取り、星の見えやすさから水蒸気量を推定し、天気予測に繋げることを目的とした。さらに、星の違う見方を生み出す事で、誰もが天体観望を楽しめるようにしたいと考えた。
2.研究方法
2-1観測内容
長野県松本市で四季を通して28日間観測を行った。また、季節ごとに対象とする星(図1,2)を設定し、露出時間を調節することで星の見えやすさを観測した。そして、風速温湿度計(K ケニス株式会社 LM-80002SN)を使い、気温と気温による飽和水蒸気量を考慮するために湿度を測定した。撮影機材としては、誰もが同じ条件で天気予測ができるようにスマートフォンのカメラアプリ(星降るカメラ)を使用した。また、上空の温度と湿度を分析するために高層天気図(850hPa)の解析を行った。
2-2研究拠点
・分布に偏りが出ないようにするため松本平の広がりを考慮し、拠点を設定した。
・風速温湿度計で観測したデータの正確性を検証するために,近隣に公的機関の観測所があることを条件とした。
この2点を考慮し、3カ所を設定した(図3)。また、④は自宅近隣で観測を行った。
2-3露出時間について
本研究では,星の見え方を数値化するために、撮影した写真上に対象とする星が写らなくなった露出度(秒数)のことを「露出時間」と表した。
3. 水蒸気量・湿度と星の見え方の関係
3-1目的
星の見えやすさから水蒸気量を求める事を目的とし、風速温湿度計で観測した水蒸気量(2019.2~2020.1)、湿度とカメラアプリで観測した露出時間(2019.2~2020.1)をそれぞれのグラフにして関係性を探った。
3-2結果
※1水蒸気量との関係では、オリオン座を対象としている季節のみ、グラフ(図4)で右肩上がりの直線を引くことができた。※2図5の橙色の丸に囲まれたプロットでは、湿度の差が殆どないのに露出時間が大幅に違う事が分かった。また、図6では赤丸にプロットが集まっている事から、※3オリオン座と白鳥座の星は同じ見え方をしていることが分かった。
3-3検証
以上より、星の見えやすさの違いは,地上ではなく上空にも原因があるという仮説を立てた。そこで高層天気図を用いて検証をした。
・地上の湿度の差 1%…(1)
・上空の湿度の差 17%…(2)
(1)、(2)から、地上の湿度が同じでも上空の湿度が高いことによって星の見え方が大きく異なることが分かった。また、※1,※3から、地上で観測した湿度ではオリオン座と白鳥座の星に見え方の傾向があるのに水蒸気量には傾向がない事が読み取れた。その原因を探るため高層天気図を解析した。
・観測した翌日が晴れまたは曇り 観測当日の午前9時の気温と露点の差は9.78度未満…(3)
・観測した翌日が雨 観測当日の午前9時の気温と露点の差は22.25度以上…(4)
(3)、(4)から、冬と夏で観測当日の午前9時の気温と露点の差 (湿度)が22.25度を超えた場合、雨になることが分かった。
3-4考察
観測した翌日雨になる場合、観測した当日は、乾いた空気を持った高気圧に覆われているが (図7)、観測した翌日に降水を発生させる湿った空気をもった低気圧が西側から進んでくる状態であった(図8)。このため、観測当日の気温と露点の差が大きいと、翌日が雨になっていると考えた。
4.天気予測
4-1目的
3の雨が降る条件から,次の日の降水量の予測をすることにした。図4,5のグラフの直線に露出時間を代入し、水蒸気量が次の日の降水量との関係性を探った。
4-2方法
次の日の降水量÷直線に代入して導き出した水蒸気量…(5)
(5)式で,導き出した値(観測した日の水蒸気量の何%が翌日の降水量になるか表した値)が一定になると仮定して、比較した。
4-3結果
(5)で求めた値の3割が10%代で近似していた。
4-4考察
※4の結果から、(5)で求めた値は上空の気象条件によるものだと考え、高層天気図を解析した。
値が10%代で近似している日の高層天気図は、等高度線が南から北に盛り上がっているところに向かって、暖かく湿っている空気が入り込んでいるように見えた。この事から、上空の気象条件によって、(5)で求めた値が一定数、変化することが分かった。
5.結論
冬と夏に限り、降水になるときの条件を見つけることができた。また、上空の気象条件によって、観測した日の水蒸気量の何割が翌日の降水量になるのかが変わってくることが分かった。
6.課題と改善案
今回は、天体観測のデータと高層天気図のデータをもとにその関係性を探った。これからは四季を通して、日々観測できるような方法を考え、実行した上で、その関係性をもとに星の見え方のみで水蒸気量の傾向を推定したい。そして、最終的には星の見え方だけで天気予測ができるようにしたい。
天体観測において妨げとなる要因の一つに水蒸気がある。その事を逆手に取り、星の見えやすさから水蒸気量を推定し、天気予測に繋げることを目的とした。さらに、星の違う見方を生み出す事で、誰もが天体観望を楽しめるようにしたいと考えた。
2.研究方法
2-1観測内容
長野県松本市で四季を通して28日間観測を行った。また、季節ごとに対象とする星(図1,2)を設定し、露出時間を調節することで星の見えやすさを観測した。そして、風速温湿度計(K ケニス株式会社 LM-80002SN)を使い、気温と気温による飽和水蒸気量を考慮するために湿度を測定した。撮影機材としては、誰もが同じ条件で天気予測ができるようにスマートフォンのカメラアプリ(星降るカメラ)を使用した。また、上空の温度と湿度を分析するために高層天気図(850hPa)の解析を行った。
2-2研究拠点
・分布に偏りが出ないようにするため松本平の広がりを考慮し、拠点を設定した。
・風速温湿度計で観測したデータの正確性を検証するために,近隣に公的機関の観測所があることを条件とした。
この2点を考慮し、3カ所を設定した(図3)。また、④は自宅近隣で観測を行った。
2-3露出時間について
本研究では,星の見え方を数値化するために、撮影した写真上に対象とする星が写らなくなった露出度(秒数)のことを「露出時間」と表した。
3. 水蒸気量・湿度と星の見え方の関係
3-1目的
星の見えやすさから水蒸気量を求める事を目的とし、風速温湿度計で観測した水蒸気量(2019.2~2020.1)、湿度とカメラアプリで観測した露出時間(2019.2~2020.1)をそれぞれのグラフにして関係性を探った。
3-2結果
※1水蒸気量との関係では、オリオン座を対象としている季節のみ、グラフ(図4)で右肩上がりの直線を引くことができた。※2図5の橙色の丸に囲まれたプロットでは、湿度の差が殆どないのに露出時間が大幅に違う事が分かった。また、図6では赤丸にプロットが集まっている事から、※3オリオン座と白鳥座の星は同じ見え方をしていることが分かった。
3-3検証
以上より、星の見えやすさの違いは,地上ではなく上空にも原因があるという仮説を立てた。そこで高層天気図を用いて検証をした。
・地上の湿度の差 1%…(1)
・上空の湿度の差 17%…(2)
(1)、(2)から、地上の湿度が同じでも上空の湿度が高いことによって星の見え方が大きく異なることが分かった。また、※1,※3から、地上で観測した湿度ではオリオン座と白鳥座の星に見え方の傾向があるのに水蒸気量には傾向がない事が読み取れた。その原因を探るため高層天気図を解析した。
・観測した翌日が晴れまたは曇り 観測当日の午前9時の気温と露点の差は9.78度未満…(3)
・観測した翌日が雨 観測当日の午前9時の気温と露点の差は22.25度以上…(4)
(3)、(4)から、冬と夏で観測当日の午前9時の気温と露点の差 (湿度)が22.25度を超えた場合、雨になることが分かった。
3-4考察
観測した翌日雨になる場合、観測した当日は、乾いた空気を持った高気圧に覆われているが (図7)、観測した翌日に降水を発生させる湿った空気をもった低気圧が西側から進んでくる状態であった(図8)。このため、観測当日の気温と露点の差が大きいと、翌日が雨になっていると考えた。
4.天気予測
4-1目的
3の雨が降る条件から,次の日の降水量の予測をすることにした。図4,5のグラフの直線に露出時間を代入し、水蒸気量が次の日の降水量との関係性を探った。
4-2方法
次の日の降水量÷直線に代入して導き出した水蒸気量…(5)
(5)式で,導き出した値(観測した日の水蒸気量の何%が翌日の降水量になるか表した値)が一定になると仮定して、比較した。
4-3結果
(5)で求めた値の3割が10%代で近似していた。
4-4考察
※4の結果から、(5)で求めた値は上空の気象条件によるものだと考え、高層天気図を解析した。
値が10%代で近似している日の高層天気図は、等高度線が南から北に盛り上がっているところに向かって、暖かく湿っている空気が入り込んでいるように見えた。この事から、上空の気象条件によって、(5)で求めた値が一定数、変化することが分かった。
5.結論
冬と夏に限り、降水になるときの条件を見つけることができた。また、上空の気象条件によって、観測した日の水蒸気量の何割が翌日の降水量になるのかが変わってくることが分かった。
6.課題と改善案
今回は、天体観測のデータと高層天気図のデータをもとにその関係性を探った。これからは四季を通して、日々観測できるような方法を考え、実行した上で、その関係性をもとに星の見え方のみで水蒸気量の傾向を推定したい。そして、最終的には星の見え方だけで天気予測ができるようにしたい。