[O04-P30] 分光観測によるハービッグAe/Be型星の分類
キーワード:前主系列星、Tタウリ型星、等価幅
1.はじめに
私達は、恒星の一生に興味を持ち、その中でも活動の活発な初期の段階にあるものを調べたいと思った。恒星の初期の様子を調べることで、身近な恒星である太陽についても、その誕生の様子について何か新たな発見があるのではないかと考えた。
恒星は、その質量によって進化の過程が異なる。前主系列星のうち、太陽質量の2倍以下のものはTタウリ型星と呼ばれ、スペクトル型がF・G・K・Mと表面温度は低い。それに対し、太陽質量の2~10倍のものはハービッグAe/Be型星と呼ばれ、スペクトル型がB・Aと表面温度は比較的高い。また、太陽質量の10倍以上の質量を持つ前主系列星は確認されていない。
私達は、岡山県美星天文台の口径101cmの望遠鏡を使って、代表的なTタウリ型星とハービッグAe/Be型星のスペクトルを取得し、それらに現れるHα線の等価幅を算出し比較した。等価幅とは、連続スペクトルに対する当該輝線の強さを表す指標である。文献を調査するなかで、Tタウリ型星が10Åの等価幅を基準にclassⅡとclassⅢの進化の段階に分類されていることを知った。しかし、ハービッグAe/Be型星については等価幅の値による分類が存在しなかったため、私達自身で基準を考えてみることにした。
2.目的
私達の研究目的は、多くのTタウリ型星とハービッグAe/Be型星についてHα輝線の等価幅を求め、その値の分布の特徴からハービッグAe/Be型星のclass分類の基準を考えることである。
3.方法
研究は以下の方法で実施した。
① 2018年11月30日と12月23日、2019年5月23日の3日間にわたり、岡山県美星天文台にて8つのTタウリ型星と11個のハービッグAe/Be型星について低分散分光観測を行った。それらのデータをすばる画像処理ソフト「Makali’i」で一次処理し、分光データ解析ソフト「Be Spec」で解析し、Hα輝線の等価幅を算出した。
② ヨーロッパ南天文台のWebサイトに掲載された38個のハービッグAe/Be型星のスペクトル図より、それぞれHα輝線の等価幅を算出した。
③ これらのハービッグAe/Be型星のHα輝線の等価幅についてヒストグラムを作成し、Tタウリ型星の値と比較することにより分類の基準を考えた。
4.結果と考察
49個のハービッグAe/Be型星についてヒストグラム(図参照)を作成すると、等価幅0~10Åの階級のものが最も多いこと、階級0~10Åから91~100Åまでは連続しているものの51~60Åに入るものは少ないこと、101~110Å以上ではまばらになっていることが読み取れた。
我々が以前行ったTタウリ型星の研究では、class間の等価幅には大差があることが考察されたため、ハービッグAe/Be型星も同様の基準で2つのclassに分類できると考えた。分類について別の基準を検討すると、以前観測したTタウリ型星の等価幅の平均値が18.6Åに対し、ハービッグAe/Be型星のそれは49.1Åであった。これよりハービッグAe/Be型星の方がTタウリ型星よりも2.64倍輝線が強いと考えられ、それによると基準値は26.4Åとなる。さらに、D. BARRADO Y NAVASCU´ES(2004)によると、Tタウリ型星においてclassⅡとclassⅢの数の比率は10:7と読み取れる。これをハービッグAe/Be型星に適用すると29個:20個となり基準値は25Åと考えられる。母集団のデータ数が多いため現時点では25Åが最も信頼できる値と考える。
5.結論と今後の展望
ハービッグAe/Be型星の輝線による分類はこれまでになされていなかったが、本研究によりHα輝線の等価幅25Åを基準に分類できる可能性が示唆された。これを検証するため、今後データ数を増やすことと前主系列星の進化のメカニズムについて更に調べることが必要と考える。
謝辞
本研究を行うにあたり、大阪教育大学の福江教授、松本准教授にご助言を頂きました。また、美星天文台の綾仁元台長、前野研究員に観測についてのご指導を頂きました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
参考文献
・野本憲一ら『シリーズ現代の天文学7 恒星』日本評論社 2009年
・European Southern Observatory http://www.eso.org/~mvandena/haebetab1.html
・T Tauri Stars: Overview http://www.astro.up.pt/~dfmf/Thesis/Hypertext/node5.html
・D. BARRADO Y NAVASCU´ES ET AL,”CLASSICAL T TAURI STARS AND SUBSTELLAR ANALOGS”(2004)
私達は、恒星の一生に興味を持ち、その中でも活動の活発な初期の段階にあるものを調べたいと思った。恒星の初期の様子を調べることで、身近な恒星である太陽についても、その誕生の様子について何か新たな発見があるのではないかと考えた。
恒星は、その質量によって進化の過程が異なる。前主系列星のうち、太陽質量の2倍以下のものはTタウリ型星と呼ばれ、スペクトル型がF・G・K・Mと表面温度は低い。それに対し、太陽質量の2~10倍のものはハービッグAe/Be型星と呼ばれ、スペクトル型がB・Aと表面温度は比較的高い。また、太陽質量の10倍以上の質量を持つ前主系列星は確認されていない。
私達は、岡山県美星天文台の口径101cmの望遠鏡を使って、代表的なTタウリ型星とハービッグAe/Be型星のスペクトルを取得し、それらに現れるHα線の等価幅を算出し比較した。等価幅とは、連続スペクトルに対する当該輝線の強さを表す指標である。文献を調査するなかで、Tタウリ型星が10Åの等価幅を基準にclassⅡとclassⅢの進化の段階に分類されていることを知った。しかし、ハービッグAe/Be型星については等価幅の値による分類が存在しなかったため、私達自身で基準を考えてみることにした。
2.目的
私達の研究目的は、多くのTタウリ型星とハービッグAe/Be型星についてHα輝線の等価幅を求め、その値の分布の特徴からハービッグAe/Be型星のclass分類の基準を考えることである。
3.方法
研究は以下の方法で実施した。
① 2018年11月30日と12月23日、2019年5月23日の3日間にわたり、岡山県美星天文台にて8つのTタウリ型星と11個のハービッグAe/Be型星について低分散分光観測を行った。それらのデータをすばる画像処理ソフト「Makali’i」で一次処理し、分光データ解析ソフト「Be Spec」で解析し、Hα輝線の等価幅を算出した。
② ヨーロッパ南天文台のWebサイトに掲載された38個のハービッグAe/Be型星のスペクトル図より、それぞれHα輝線の等価幅を算出した。
③ これらのハービッグAe/Be型星のHα輝線の等価幅についてヒストグラムを作成し、Tタウリ型星の値と比較することにより分類の基準を考えた。
4.結果と考察
49個のハービッグAe/Be型星についてヒストグラム(図参照)を作成すると、等価幅0~10Åの階級のものが最も多いこと、階級0~10Åから91~100Åまでは連続しているものの51~60Åに入るものは少ないこと、101~110Å以上ではまばらになっていることが読み取れた。
我々が以前行ったTタウリ型星の研究では、class間の等価幅には大差があることが考察されたため、ハービッグAe/Be型星も同様の基準で2つのclassに分類できると考えた。分類について別の基準を検討すると、以前観測したTタウリ型星の等価幅の平均値が18.6Åに対し、ハービッグAe/Be型星のそれは49.1Åであった。これよりハービッグAe/Be型星の方がTタウリ型星よりも2.64倍輝線が強いと考えられ、それによると基準値は26.4Åとなる。さらに、D. BARRADO Y NAVASCU´ES(2004)によると、Tタウリ型星においてclassⅡとclassⅢの数の比率は10:7と読み取れる。これをハービッグAe/Be型星に適用すると29個:20個となり基準値は25Åと考えられる。母集団のデータ数が多いため現時点では25Åが最も信頼できる値と考える。
5.結論と今後の展望
ハービッグAe/Be型星の輝線による分類はこれまでになされていなかったが、本研究によりHα輝線の等価幅25Åを基準に分類できる可能性が示唆された。これを検証するため、今後データ数を増やすことと前主系列星の進化のメカニズムについて更に調べることが必要と考える。
謝辞
本研究を行うにあたり、大阪教育大学の福江教授、松本准教授にご助言を頂きました。また、美星天文台の綾仁元台長、前野研究員に観測についてのご指導を頂きました。この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
参考文献
・野本憲一ら『シリーズ現代の天文学7 恒星』日本評論社 2009年
・European Southern Observatory http://www.eso.org/~mvandena/haebetab1.html
・T Tauri Stars: Overview http://www.astro.up.pt/~dfmf/Thesis/Hypertext/node5.html
・D. BARRADO Y NAVASCU´ES ET AL,”CLASSICAL T TAURI STARS AND SUBSTELLAR ANALOGS”(2004)