[O04-P31] 表面の色による小惑星の分類~BVR等級の違い~
キーワード:測光観測、BVR等級、物理量
1.はじめに
私達は、天文・宇宙に関するテーマについて研究したいと考えていた。そして、色々と文献を調べていた時に小惑星とその色に興味を持った。詳しく調べてみると、B(青)・V(緑)・R(赤)の3枚のフィルターを用いて撮影した写真から天体の色を判断することができるとわかった。そこで、岡山県美星天文台でBVRの各フィルターによる多色測光観測を行い、BVR等級の違いにより16個の小惑星を分類し、これらの色の違いがなぜ生じるかを調べることにした。
2.目的
私達の研究の目的は、BVR等級の特徴から自分達の決めた基準で小惑星を分類すること、得られたデータをもとに小惑星の表面の色の違いが生じる理由を調べることの2点である。
3.方法
以下の方法で研究を進めた。
① 岡山県美星天文台の口径101cm望遠鏡で、B・V・Rの各フィルターを用いて多色測光観測を行った。観測した小惑星は、Ariadne , Hestia , Juno , Victoria(2018年10月19日)、Eros , Hebe(2018年12月22日)、Julia , Kleopatra , Themis(2018年12月23日)、Abundantia , Lydia(2019年3月23日)、Aspasia , Bellona , Fides , Klotho , Thisbe(2019年11月17日)の計16個である。
② それぞれの小惑星の画像について、「Makali’i」(国立天文台・(株)アストロアーツ)を用いて一次処理を行った後、目的の小惑星と比較星の明るさを開口測光にて測定した。
③ ポグソンの式を用いて、それぞれの小惑星のBVR各等級を計算した。ここで、比較星の等級として、天体データベース「Aladin Sky Atlas」のGaia DR2の値を用いた。
④ 横軸をB・V・R、縦軸を等級とした折れ線グラフを作成し、近似しているものごとにグループ分けを行った。
4.結果
グラフの特徴から、小惑星を以下の3つのグループに分けることができた。(グラフ中の誤差の範囲は、それぞれ標準偏差を表している。)
グループⅠ: B・V等級がほぼ等しく、R等級が明るいタイプ Abundantia(図1)
グループⅡ: V・R等級がほぼ等しく、B等級が暗いタイプ Victoria(図2)
グループⅢ: B等級が暗く、R等級が明るいため、右上がりのタイプ 残り14個(図3)
5.考察
まず、グラフの特徴と小惑星の物理量(軌道長半径、離心率、小惑星の実半径)とを比較してみる。グループⅠのAbundantiaは、離心率が0.035と最も円に近い軌道であり、実半径も2番目に小さいが、これがR等級が明るい、すなわち赤みを帯びている理由にはならないと考えられる。また、グループⅡのVictoriaは、軌道長半径、離心率、実半径とも平均的であり、この天体が他と異なる特徴をもつ理由は見出せない。このことから、表面の色を表すBVR等級と小惑星の物理量とは無関係であるといえる。
一方、古在由秀編『月と小惑星』によると、小惑星表面に存在する物質により見かけの色やアルベドが変化するとある。そして表面物質によって、小惑星は6種類のグループに分けられている。この記述に照らし合わせると、グループⅠのAbundantiaは、石鉄隕石型で酸化鉄に覆われた表面をもつためR等級が卓越していると推測できる。また、グループⅡのVictoriaは、B等級が暗いため、表面が炭素質で覆われた小惑星の特徴をもつといえる。最も多くの小惑星が属するグループⅢは、一般的なケイ酸塩鉱物を含んでいると考えられる。
6.結論と今後の展望
今回の研究の結果、小惑星の表面の色は、表面の物質によって決まるということがわかった。今後は、観測する小惑星の数を更に増やすとともに、表面の物質を推定する場合の手掛かりになるI等級やスペクトルについても観測したいと思う。また、小惑星の表面の色と表面物質の関係について、実験を通して確かめる方法についても研究していきたい。
謝辞
本研究を行うにあたり大阪教育大学の福江教授、松本准教授にご指導いただきました。また、美星天文台の綾仁元台長、前野研究員には観測のご指導をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
参考文献
古在由秀 編 「月と小惑星」恒星社厚生閣(1979)
すばる画像解析ソフト「Makali’i」 https://makalii.mtk.nao.ac.jp/index.html.ja
Aladin Sky Atlas https://aladin.u-strasbg.fr/
NASA HORIZONS https://ssd.jpl.nasa.gov/horizons.cgi
私達は、天文・宇宙に関するテーマについて研究したいと考えていた。そして、色々と文献を調べていた時に小惑星とその色に興味を持った。詳しく調べてみると、B(青)・V(緑)・R(赤)の3枚のフィルターを用いて撮影した写真から天体の色を判断することができるとわかった。そこで、岡山県美星天文台でBVRの各フィルターによる多色測光観測を行い、BVR等級の違いにより16個の小惑星を分類し、これらの色の違いがなぜ生じるかを調べることにした。
2.目的
私達の研究の目的は、BVR等級の特徴から自分達の決めた基準で小惑星を分類すること、得られたデータをもとに小惑星の表面の色の違いが生じる理由を調べることの2点である。
3.方法
以下の方法で研究を進めた。
① 岡山県美星天文台の口径101cm望遠鏡で、B・V・Rの各フィルターを用いて多色測光観測を行った。観測した小惑星は、Ariadne , Hestia , Juno , Victoria(2018年10月19日)、Eros , Hebe(2018年12月22日)、Julia , Kleopatra , Themis(2018年12月23日)、Abundantia , Lydia(2019年3月23日)、Aspasia , Bellona , Fides , Klotho , Thisbe(2019年11月17日)の計16個である。
② それぞれの小惑星の画像について、「Makali’i」(国立天文台・(株)アストロアーツ)を用いて一次処理を行った後、目的の小惑星と比較星の明るさを開口測光にて測定した。
③ ポグソンの式を用いて、それぞれの小惑星のBVR各等級を計算した。ここで、比較星の等級として、天体データベース「Aladin Sky Atlas」のGaia DR2の値を用いた。
④ 横軸をB・V・R、縦軸を等級とした折れ線グラフを作成し、近似しているものごとにグループ分けを行った。
4.結果
グラフの特徴から、小惑星を以下の3つのグループに分けることができた。(グラフ中の誤差の範囲は、それぞれ標準偏差を表している。)
グループⅠ: B・V等級がほぼ等しく、R等級が明るいタイプ Abundantia(図1)
グループⅡ: V・R等級がほぼ等しく、B等級が暗いタイプ Victoria(図2)
グループⅢ: B等級が暗く、R等級が明るいため、右上がりのタイプ 残り14個(図3)
5.考察
まず、グラフの特徴と小惑星の物理量(軌道長半径、離心率、小惑星の実半径)とを比較してみる。グループⅠのAbundantiaは、離心率が0.035と最も円に近い軌道であり、実半径も2番目に小さいが、これがR等級が明るい、すなわち赤みを帯びている理由にはならないと考えられる。また、グループⅡのVictoriaは、軌道長半径、離心率、実半径とも平均的であり、この天体が他と異なる特徴をもつ理由は見出せない。このことから、表面の色を表すBVR等級と小惑星の物理量とは無関係であるといえる。
一方、古在由秀編『月と小惑星』によると、小惑星表面に存在する物質により見かけの色やアルベドが変化するとある。そして表面物質によって、小惑星は6種類のグループに分けられている。この記述に照らし合わせると、グループⅠのAbundantiaは、石鉄隕石型で酸化鉄に覆われた表面をもつためR等級が卓越していると推測できる。また、グループⅡのVictoriaは、B等級が暗いため、表面が炭素質で覆われた小惑星の特徴をもつといえる。最も多くの小惑星が属するグループⅢは、一般的なケイ酸塩鉱物を含んでいると考えられる。
6.結論と今後の展望
今回の研究の結果、小惑星の表面の色は、表面の物質によって決まるということがわかった。今後は、観測する小惑星の数を更に増やすとともに、表面の物質を推定する場合の手掛かりになるI等級やスペクトルについても観測したいと思う。また、小惑星の表面の色と表面物質の関係について、実験を通して確かめる方法についても研究していきたい。
謝辞
本研究を行うにあたり大阪教育大学の福江教授、松本准教授にご指導いただきました。また、美星天文台の綾仁元台長、前野研究員には観測のご指導をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
参考文献
古在由秀 編 「月と小惑星」恒星社厚生閣(1979)
すばる画像解析ソフト「Makali’i」 https://makalii.mtk.nao.ac.jp/index.html.ja
Aladin Sky Atlas https://aladin.u-strasbg.fr/
NASA HORIZONS https://ssd.jpl.nasa.gov/horizons.cgi