JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-04] 高校生によるポスター発表

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

[O04-P41] 操作性と応用性に優れたポータブル赤道儀式架台の開発

*池田 隼1 (1.海城高等学校)

キーワード:天文、工学、天体観測

操作性と拡張性の高いポータブルな赤道儀式架台を開発している。赤道儀とは、天体の日周運動に合わせて望遠鏡やカメラなどの観測道具を回転させてより詳細な観察を可能にする装置である。初代、二代を経て高精度の追尾機能が実現した。
その後、市販の赤道儀との差別化を目指し三代目の開発を開始した。赤道儀では、まず回転軸を天の北極に合わせる必要があるが、ここでの精度が追尾性能に大きく影響するため、軸合わせの自動化を目指す。また、ポータブル赤道儀の弱点として、観察対象を変えるために望遠鏡の向きを変える際、架台全体をずらしてしまうことがあり、そうなった場合軸合わせを再度行う必要がある。これを解決するため、赤緯方向の回転もモーターで操作可能にすることとする。また、精度については、既存のピリオディックモーションという指標の他、追尾速度を直接求める独自の指標を測定することとする。最終的には組立手引書をインターネット上に公開することを目標とする。

まず、細かいステップで(なめらかで)、超低速度、高トルクという特殊な回転を実現するため、ステッピングモーターを使用し、電圧変化の細分化、ウォームギアという減速比の高い歯車を用いた。これにより最も軽量な三号機の赤緯回転部分でも約56kgf*cmという高トルクを実現し、ステップ角に関しても、0.00018°刻みとなった。
次にモーターの操作についてはスマートフォンとの連携を採ることとした。プログラム処理の部分に、Arduino互換のESP32というマイクロコンピューターを使用することで、格安でBluetoothによるAndroidスマートフォンとの通信、モーターの速度変更に成功した。一方iOSスマートフォンでは現在まだ確認が取れていないため、WiFi通信に切換えることも検討している。
また、歯車の軸が正確に噛み合わないと精度に大きな影響を及ぼすため、軸の固定方法に工夫を施した。モーターはねじなどで締めて固定するのではなく、ねじで挟むような形で、固定後も微調整が可能なようにした。またベアリングは市販のL字金具などを用いて、こちらも後から微調整可能にして固定することで、一定の精度を実現した。

初代、二代の赤道儀では、一定の追尾精度が確認できたが、客観的な数値が示せなかった。そのためPythonを用いて視野角や観察対象の赤緯をもとに求められるようプログラムを書いている。

現在の三号機は赤緯回転部分までが完成している。一方今後の課題も残る。固定方法などで工夫したことによる重量化から、下部の回転機構ではより大きなトルクが必要となることが予想され、それを加味した再設計が必要となっている。また、精度測定プログラムは未だ完成しておらず、更なる調整が必要となっている。