[O04-P43] 三陸ジオパーク北部エリアの検討とジオの魅力を高め変動帯をわかりやすく伝える「ジオ紙芝居」の提案4 八戸キャニオン
キーワード:ジオパーク、三陸ジオパーク、石灰岩、地域活動、科学クラブ
三陸ジオパークは、青森県から宮城県にかけての太平洋岸に設置されている。マリエント「ちきゅう」たんけんクラブ・シニアの属する八戸市水産科学館マリエントはその北端部にある。筆者らは、平成30年度から郷土を学習する活動として三陸ジオパークについて学習してきた。巡検と観察、討論を元に協同学習を進め、知識の共有と情報発信の態度を育成するため「ジオ紙芝居」を作成し、実演してきた。その成果をJPGU2019と第10回日本ジオパーク全国大会2019おおいた大会においてポスターと口頭で発表してきた。
令和元年度のジオパークに関係する活動は、岩手県久慈市の久慈渓流と久慈琥珀館、同県九戸郡洋野町の種市海浜公園、青森県八戸市の種差海岸と是川遺跡の5カ所のジオサイト(図1)、八戸石灰鉱山を加えた巡検と予備学習と振り返りであった。マリエントちきゅうたんけんクラブ・ジュニアでは何度か八戸石灰鉱山を見学していて、平成21年(2009年)には鉱山周辺の植樹と掘削最深部の見学を行っている。
八戸鉱山の巡検と振り返りを元に協同学習を進めた結果、八戸石灰鉱山をジオサイトに組み入れる提案をすることにした。その過程で、知識の共有と情報発信の態度を育成するためこれまで取り組んできた「ジオ紙芝居」を作成し、活用することとした。
八戸石灰鉱山は、三陸ジオパーク北部エリアの青森県八戸市に位置する。隣接するジオサイトの階上海成段丘とあわせ、表面を厚い十和田火山の火山灰層に覆われた海成段丘が数段に重なる独特の地形をしている。その地下部はチャートをはさむ石灰岩からなるジュラ紀付加体とされていて、周辺にはドリーネや露頭が散在している。八戸石灰鉱山の底を流れていた松館川支流には、石灰岩を貫く「蛇抜穴(じゃぬけあな)」と「伊閉穴(いへいあな)」があって、古くからの名所であった。
石灰岩の本格的採掘は大正10年(1921年)の日の出セメント湊工場創業から始まり、工業都市八戸の礎となった。現在は東西に1000m、南北に1800mで標高約100mの大地から海面下170mまで掘られた巨大な穴となっていて、その底は「日本一空から遠い場所」とも呼ばれている(写真1)。広大な景観をアメリカのグランドキャニオンに例えて「八戸キャニオン」と名付けられて観光資源ともなっているが、三陸ジオパークのジオサイトにはなっていない。
巡検を終えての振り返りで、石灰岩が身近なものかわからない、鉱山の規模が巨大すぎる、説明が少ない、交通が不便だ、発破の時間など見学時間に制限があるなどの課題が出た。
しかし、身近にあって大地の歴史を学習するのに好適であり、地域の観光や経済への貢献を考慮すると是非ジオサイトに含むべきと考えた。そのために、八戸キャニオンの魅力を高め、大地のストーリー性を重視しながらわかりやすいジオ紙芝居を作成・実演して、広く訴えかけることにした。
八戸キャニオンの魅力は採掘溝のスケール、ここまでの時間と距離のスケール、小さな生き物の大きなはたらきと大地の歴史であり、身近な石灰石や採掘の地球環境への影響についても取り上げたい。
ジオ紙芝居のテーマは、「付加体と石灰岩」、「八戸キャニオンとは」、「なぜ石灰岩がサンゴからできたとわかるか」、「三陸ジオパークの石灰岩」とし、分担して作成した。原画や説明は、以前に作成した物を参考にし、会員内で実演して何度も訂正を繰り返して作成した。ただし4月18日時点で、新型コロナウイルス(COVID-19)への配慮により「ジオ紙芝居」の公開実演はできていない。
この活動を通じて、私たちは今も動いている大地に暮らしていて、その恵みを受けていることが理解できた。そして、大地の変化をむやみにおそれず、よく知って、それにそなえる知恵をジオパークから学んでいきたい。同時に新たなジオサイトやジオサイトを繋ぐジオストーリーを提案していきたい。そして、この考えを「ジオ紙芝居」を使って多くの人に伝えていきたい。
謝辞
この研究にあたり、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、八戸市、八戸市教育委員会、国立研究開発法人海洋研究開発機構研究成果活用促進八戸市議会議員連盟、会員の所属する各高等学校はじめ多くの方々からご指導とご協力をいただいた。記してここに謝意を表する。
令和元年度のジオパークに関係する活動は、岩手県久慈市の久慈渓流と久慈琥珀館、同県九戸郡洋野町の種市海浜公園、青森県八戸市の種差海岸と是川遺跡の5カ所のジオサイト(図1)、八戸石灰鉱山を加えた巡検と予備学習と振り返りであった。マリエントちきゅうたんけんクラブ・ジュニアでは何度か八戸石灰鉱山を見学していて、平成21年(2009年)には鉱山周辺の植樹と掘削最深部の見学を行っている。
八戸鉱山の巡検と振り返りを元に協同学習を進めた結果、八戸石灰鉱山をジオサイトに組み入れる提案をすることにした。その過程で、知識の共有と情報発信の態度を育成するためこれまで取り組んできた「ジオ紙芝居」を作成し、活用することとした。
八戸石灰鉱山は、三陸ジオパーク北部エリアの青森県八戸市に位置する。隣接するジオサイトの階上海成段丘とあわせ、表面を厚い十和田火山の火山灰層に覆われた海成段丘が数段に重なる独特の地形をしている。その地下部はチャートをはさむ石灰岩からなるジュラ紀付加体とされていて、周辺にはドリーネや露頭が散在している。八戸石灰鉱山の底を流れていた松館川支流には、石灰岩を貫く「蛇抜穴(じゃぬけあな)」と「伊閉穴(いへいあな)」があって、古くからの名所であった。
石灰岩の本格的採掘は大正10年(1921年)の日の出セメント湊工場創業から始まり、工業都市八戸の礎となった。現在は東西に1000m、南北に1800mで標高約100mの大地から海面下170mまで掘られた巨大な穴となっていて、その底は「日本一空から遠い場所」とも呼ばれている(写真1)。広大な景観をアメリカのグランドキャニオンに例えて「八戸キャニオン」と名付けられて観光資源ともなっているが、三陸ジオパークのジオサイトにはなっていない。
巡検を終えての振り返りで、石灰岩が身近なものかわからない、鉱山の規模が巨大すぎる、説明が少ない、交通が不便だ、発破の時間など見学時間に制限があるなどの課題が出た。
しかし、身近にあって大地の歴史を学習するのに好適であり、地域の観光や経済への貢献を考慮すると是非ジオサイトに含むべきと考えた。そのために、八戸キャニオンの魅力を高め、大地のストーリー性を重視しながらわかりやすいジオ紙芝居を作成・実演して、広く訴えかけることにした。
八戸キャニオンの魅力は採掘溝のスケール、ここまでの時間と距離のスケール、小さな生き物の大きなはたらきと大地の歴史であり、身近な石灰石や採掘の地球環境への影響についても取り上げたい。
ジオ紙芝居のテーマは、「付加体と石灰岩」、「八戸キャニオンとは」、「なぜ石灰岩がサンゴからできたとわかるか」、「三陸ジオパークの石灰岩」とし、分担して作成した。原画や説明は、以前に作成した物を参考にし、会員内で実演して何度も訂正を繰り返して作成した。ただし4月18日時点で、新型コロナウイルス(COVID-19)への配慮により「ジオ紙芝居」の公開実演はできていない。
この活動を通じて、私たちは今も動いている大地に暮らしていて、その恵みを受けていることが理解できた。そして、大地の変化をむやみにおそれず、よく知って、それにそなえる知恵をジオパークから学んでいきたい。同時に新たなジオサイトやジオサイトを繋ぐジオストーリーを提案していきたい。そして、この考えを「ジオ紙芝居」を使って多くの人に伝えていきたい。
謝辞
この研究にあたり、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)、八戸市、八戸市教育委員会、国立研究開発法人海洋研究開発機構研究成果活用促進八戸市議会議員連盟、会員の所属する各高等学校はじめ多くの方々からご指導とご協力をいただいた。記してここに謝意を表する。