[O04-P63] アナログ実験によるつむじ風の発生・消滅条件の探求
キーワード:気象
1.背景
本研究の目的はつむじ風が発達・消滅する条件をアナログ実験により明らかにすることである。そのため、人工的につむじ風様の鉛直渦を発生させる装置の製作を行った。
つむじ風は晴れた日の日中に突発的に発生する強い鉛直渦であり、テントが飛ばされるなどの被害が時々報告される。私たちは、なぜそのような強い渦が突発的に発生し、そして消滅するのか疑問に思った。現在、つむじ風の発生メカニズムについての研究は数値シミュレーションにより行われている。しかし、数値シミュレーションは想定した条件下でのパラメータ探索が容易な一方で,地表面摩擦の影響や乱流といった微細な構造を取り入れることは難しい。そこで、私たちは、より細かな構造や擾乱を容易に入れられる、アナログ実験を行うことにした。環境条件をコントロールしながら人工的につむじ風を作り出し、つむじ風の構成パラメータを定量的に評価することで、数値シミュレーションでは知りえなかった性質を発見できることを期待して本研究を開始した。
2.研究の手法
つむじ風の発生メカニズムに関する先行研究を参考に、つむじ風が発生しやすいとされる環境を再現する、すなわち上昇気流に角運動量を与え、つむじ風のような鉛直渦を発生させる装置を製作する。ホットプレートで地表面(水)を加熱し上昇気流を発生させ、円筒状の網を回転させることで流入する気流に角運動量を与える装置を考案した。水を加熱するのは湯気を発生させてつむじ風を可視化するためである。さらにこの湯気にシート状のレーザー光を当てることで、任意の渦の断面を定量的に計測できるように工夫した。またビデオカメラを用いて、撮影した渦の画像から渦の大きさを求める方法を確立した。この装置を用いて与える角運動量を変化させたときの渦の直径の変化及び渦の内部の温度分布を計測した。
3.結果と考察
地表面温度を一定にしたまま、与える角運動量を大きくすると渦の直径は増加した。渦の内部は周辺部よりも高温となっており、渦直径が小さいときのほうが温度差は顕著であった。また中心部の鉛直方向の温度傾度は渦直径が大きい、つまり与える角運動量が大きいときのほうが顕著であった。
このように、つむじ風は地表面の熱の効率的な輸送を担っているようである。中心部が周囲より高温になるのは、つむじ風の中心向きの気圧傾度力により地表面付近の高温の空気が集められるためであり、中心向きの大きな気圧傾度力は、中心付近が高温である結果であると考える。しかしながら、つむじ風の形成初期に、なぜ中心向きの大きな気圧傾度力が生まれるのかについて、明快な答えを得ることはできなかった。
今後、地表面の温度分布や与える角運動量、微細な地表面構造などのコントロールを行いながらつむじ風を構成するパラメータを定量し、渦動粘性係数を用いた実際のつむじ風と実験装置のスケーリングを経ることで、つむじ風の発生消滅の条件を明らかにできるのではないかと考えている。
4.謝辞
本研究をするにあたってご指導いただいた静岡大学理学部地球科学科の生田領野准教授、様々な支援をしていただいた静岡大学FSS事務局の皆様に感謝申し上げます。
5.参考文献
・伊藤純至、(平成29年)、塵旋風の発生・発達機構と強風、日本風工学会誌第42巻第1号
・新野宏、(2009)、竜巻と塵旋風-大気の激しい渦の理解の現状と課題、第58回理論応用力学講演会 https://doi.org/10.11345/japannctam.58.0.2.0
本研究の目的はつむじ風が発達・消滅する条件をアナログ実験により明らかにすることである。そのため、人工的につむじ風様の鉛直渦を発生させる装置の製作を行った。
つむじ風は晴れた日の日中に突発的に発生する強い鉛直渦であり、テントが飛ばされるなどの被害が時々報告される。私たちは、なぜそのような強い渦が突発的に発生し、そして消滅するのか疑問に思った。現在、つむじ風の発生メカニズムについての研究は数値シミュレーションにより行われている。しかし、数値シミュレーションは想定した条件下でのパラメータ探索が容易な一方で,地表面摩擦の影響や乱流といった微細な構造を取り入れることは難しい。そこで、私たちは、より細かな構造や擾乱を容易に入れられる、アナログ実験を行うことにした。環境条件をコントロールしながら人工的につむじ風を作り出し、つむじ風の構成パラメータを定量的に評価することで、数値シミュレーションでは知りえなかった性質を発見できることを期待して本研究を開始した。
2.研究の手法
つむじ風の発生メカニズムに関する先行研究を参考に、つむじ風が発生しやすいとされる環境を再現する、すなわち上昇気流に角運動量を与え、つむじ風のような鉛直渦を発生させる装置を製作する。ホットプレートで地表面(水)を加熱し上昇気流を発生させ、円筒状の網を回転させることで流入する気流に角運動量を与える装置を考案した。水を加熱するのは湯気を発生させてつむじ風を可視化するためである。さらにこの湯気にシート状のレーザー光を当てることで、任意の渦の断面を定量的に計測できるように工夫した。またビデオカメラを用いて、撮影した渦の画像から渦の大きさを求める方法を確立した。この装置を用いて与える角運動量を変化させたときの渦の直径の変化及び渦の内部の温度分布を計測した。
3.結果と考察
地表面温度を一定にしたまま、与える角運動量を大きくすると渦の直径は増加した。渦の内部は周辺部よりも高温となっており、渦直径が小さいときのほうが温度差は顕著であった。また中心部の鉛直方向の温度傾度は渦直径が大きい、つまり与える角運動量が大きいときのほうが顕著であった。
このように、つむじ風は地表面の熱の効率的な輸送を担っているようである。中心部が周囲より高温になるのは、つむじ風の中心向きの気圧傾度力により地表面付近の高温の空気が集められるためであり、中心向きの大きな気圧傾度力は、中心付近が高温である結果であると考える。しかしながら、つむじ風の形成初期に、なぜ中心向きの大きな気圧傾度力が生まれるのかについて、明快な答えを得ることはできなかった。
今後、地表面の温度分布や与える角運動量、微細な地表面構造などのコントロールを行いながらつむじ風を構成するパラメータを定量し、渦動粘性係数を用いた実際のつむじ風と実験装置のスケーリングを経ることで、つむじ風の発生消滅の条件を明らかにできるのではないかと考えている。
4.謝辞
本研究をするにあたってご指導いただいた静岡大学理学部地球科学科の生田領野准教授、様々な支援をしていただいた静岡大学FSS事務局の皆様に感謝申し上げます。
5.参考文献
・伊藤純至、(平成29年)、塵旋風の発生・発達機構と強風、日本風工学会誌第42巻第1号
・新野宏、(2009)、竜巻と塵旋風-大気の激しい渦の理解の現状と課題、第58回理論応用力学講演会 https://doi.org/10.11345/japannctam.58.0.2.0