JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-04] 高校生によるポスター発表

コンビーナ:原 辰彦(建築研究所国際地震工学センター)、道林 克禎(名古屋大学 大学院環境学研究科 地球環境科学専攻 地質・地球生物学講座 岩石鉱物学研究室)、久利 美和(気象庁)、紺屋 恵子(海洋研究開発機構)

[O04-P65] 70年間にわたる黒点観測データの分析と今後の展望

*浜島 悠哉1 (1.東京都立立川高等学校)

キーワード:太陽、黒点、差動回転、黒点の面積

背景
立川高校天文気象部では、1947年から70年以上にわたって黒点観測を行ってきた。5年前には、先輩方が約5500日分の記録から黒点相対数の連続グラフを作成した。3年前には観測スケッチから黒点の自転周期を計測し、太陽の差動回転に関する研究を行った。今回の研究では、先行研究に新たなデータを追加し、差動回転について計測値の見直し作業を行い、詳細な分析を行った。
目的
70年にわたる黒点観測データを分析し、黒点相対数の増減、差動回転の傾向、黒点面積と相対数の関係の3点について分析する。
方法
1)黒点相対数について
観測データ約500日分を追加し、相対数の連続グラフを作成した。また、本校データの中で極大期に黒点数が最も多く観測されたサイクル19と、サイクル24を比較した。
2)差動回転について
先行研究の53個の黒点自転周期データに25個のデータを以下の方法で追加した。
極大期のスケッチから、自転周期の計算が可能な黒点群を選び、黒点群の経緯度と移動した角度を専用のトレーシングペーパーで読み取る。次に、地球の公転角を考慮して自転周期を求める。次に過去の計測データを精査して追加し、黒点の太陽面上の平均緯度と自転周期の関係をグラフ化した。理論値は、理科年表に記載の対地球自転周期の式に、地球の公転周期を考慮した式で求めた。
3)黒点の面積と黒点相対数について
国立天文台が観測した太陽の白色全面光画像(1997年~2019年)について、openCVを用いたプログラム(Python)で黒点の面積を算出し、この値(ピクセル数)と本校の黒点相対数との関連を調べた。
結果と考察
1)黒点相対数について
最近の観測データを追加した本校70年間の黒点相対数の変化は、公共観測機関と概ね一致した。サイクル24の黒点相対数は、サイクル19に比較して非常に少なく、極大期の大きな流れで見ると、次回のサイクル25は今回よりもさらに小さくなる可能性が考えられる。
2)差動回転について
本校の計測値から作成した推定値の回帰曲線は、差動回転の傾向を示し、低緯度では理論値とほぼ一致した。また、高緯度ではより大きい値を示し、自転周期の長い黒点が多く計測されたが、データのばらつきにはかなり幅があった。
3)黒点面積と黒点相対数について
国立天文台のデータから算出した黒点の面積(ピクセル数)と本校の黒点相対数について、ほぼ同じ増減の傾向を示し、正の強い相関が見られた。太陽の活動が活発であるほど黒点の面積が大きくなると考えられる。
今後の観測についての課題
今後は黒点数の出現が減り、部としては観測の機会が減ることによるスキルの低下が懸念される。黒点観測には複雑な手順があり習得は容易ではないため、観測方法をイラストや写真でわかりやすく説明したマニュアルを作成した。その他、Hα太陽望遠鏡による観測も試みたが、活用が難しく、新たな観測方法がないか検討している。公共観測機関はスケッチ観測からCCD画像による観測に変わり、毎日Webデータを入手できる時代になったが、我々はスケッチ観測を続け、研究を進めていきたいと考えている。
参考文献
SIDC‐SolarInfluences Data Analysis Center
国立天文台太陽観測科学プロジェクト