JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 O (パブリック) » パブリック

[O-05] 日本のジオパークから日本列島の成り立ちを知る

コンビーナ:松原 典孝(兵庫県立大学大学院 地域資源マネジメント研究科)、市橋 弥生(佐渡ジオパーク推進協議会)、今井 ひろこ(コムサポートオフィス/和歌山大学国際観光学研究センター)、小原 北士(Mine秋吉台ジオパーク推進協議会)

[O05-P44] 立山黒部ジオパークと大学教育との連携-初年次教育と教員免許状更新講習-

*大西 宏治1安江 健一1山岡 勇太2原田 拓也1今堀 喜一2 (1.富山大学、2.立山黒部ジオパーク協会)

キーワード:立山黒部ジオパーク、富山大学、巡検、ワークショップ、教員免許状更新講習

立山黒部ジオパークは、富山県東部の9市町村と富山湾の一部をジオパークエリアとして構成されている。富山大学は富山市2つ、高岡市に1つの3つのキャンパスで構成されている。富山市内の五福ならびに杉谷キャンパスはジオパークエリア内に立地し、高岡キャンパスはエリアから外れるものの、ジオパークの象徴的な風景を形作る立山連峰を望むことができる。富山大学はジオパークエリアに位置することから、大学教育でジオパークを活用して、その理解を促進することが望まれる。また、ジオパークの大学教育の活用というと、地球科学の中でも自然科学の視点からの取り組みが想像されるが、本報告では自然環境を学ぶことを入口に、人文、社会の教育での活用を検討する。
 富山大学教養教育科目に「富山の地域づくり」という講義がある。この授業は全学部1年生対象の授業で、富山県や富山市の自治体のまちづくりの取り組みなどを自治体職員が講義をするものと、それらで得た知識をもとにレジリエンスやSDGsなどの視点から富山市の将来の地域像を考える1日がかりのワークショップで構成される。そのなかで、立山黒部ジオパーク協会からは、ジオパーク活動についての説明と、このジオパークの特徴や大学キャンパスから見えるジオサイトの解説、ジオパークを通して富山を考える意義などを説明してもらっている。これらの知識を踏まえ、地域の課題を解決する方法を考えるワークショップを実施している。2018年度にはレジリエントの視点から地域の持続可能性を考え、富山県外からどのような人を観光や移住で呼び込むことができるのかを考えた。2019年度にはSDGsの観点から30年後に富山市がどのようになっていて欲しいのかを考えてもらうワークショップを実施した。このワークショップを通じて、学生がこれまでの授業で得た自治体の取り組みやジオパークの知識が、地域のさまざまな課題を考える際に能動的に活用できるように転換されていた。
 教員免許状更新講習では「立山黒部ジオパークを教材化する」というタイトルで、ジオパークについての解説とともに、専門員とともにジオパークエリアを巡検した。ジオパークエリア内にある見える教材を授業に活用する重要性に参加者が気づくことができた。また、ジオパークのテーマである高低差4000mとそこにある水循環をどのように授業で活用するのか、学校教育のそれぞれの段階でどのような授業が構想可能なのかを考える機会となった。
 このようにジオパークから得られた知識やジオパーク活動そのものを大学教育のなかで取り上げることができることはわかった。このような活動を入口にジオパーク活動の裾野を広げる取り組みにつなげていく方法を模索したい。特に自然科学的な知を入口に日常生活からジオパークに考えをつなげる手立てを今後も検討する必要がある。