JpGU-AGU Joint Meeting 2020

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[J] 口頭発表

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[O-06] キッチン地球科学:手を動かす実験で頭脳を刺激しよう!

コンビーナ:熊谷 一郎(明星大学理工学部)、久利 美和(気象庁)、市原 美恵(東京大学地震研究所)、栗田 敬、座長:熊谷 一郎(明星大学理工学部)

[O06-02] ストロー笛に学ぶ火山性微動の発生・停止機構

*市原 美恵1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:火山性微動、モデル実験、振動、流れ

火山では,様々な振動が地震計や空振計でとらえられる.その中で,長年,多くの研究者を魅了している振動現象に,調和型微動というものがある.英語では,Harmonic Tremor と呼ばれ,「ハーモニー」と「トレモロ」という音楽用語を語源とする.まさに,楽器の奏でる音のような振動である.本研究では,リコーダー,オカリナ,ストロー笛という身近な笛の音の発生機構や音色を決めるメカニズムの理解を通し,火山の振動現象への理解を進めることを目指している.楽器の物理学については膨大な研究があり,比較的簡単なモデルで現象の説明がうまくされているものも多い(例えば,Fletcher and Rossing, 1991).従って,研究のツールとしても,火山の教材としても活用できると期待している.本研究では,特にストロー笛に注目する.ストロー笛は,斜めにカットされたストローの先端に薄い膜を一点のみで張り付けたもので,空気の流れによって膜が振動して音を出す.市販されているストロー笛は,膜の部分が風船の中に入っており,風船を膨らませて開放したときに音を出す.ここでは,アクリル容器に膜の部分を入れ,膜の振動を可視化する.それだけでは空気を流しても振動は発生せず,膜の上流側(アクリル容器の手前)に風船を追加することで音を出すことができる.そして,空気の流入・流出のバランスで風船が膨張収縮するとともに,音が突然止まったり再開したりする様子が見られる.Ichihara et al., (2013, EPS) では,このストロー笛を用いて,新燃岳2011年噴火で発生した調和型微動を模擬する実験について報告した.しかし,振動発生が間欠的になるメカニズムについて,十分に調べられていなかった.ここでは,ストロー笛の部分を弾性体の間を流れる流体が励起する振動でモデル化する.これは,火山性微動のモデルとして広く引用されている,Julian (1994)が提案したモデルとよく似たものである.笛の部分の固有振動と,空気をためるチャンバーの固有振動の関係が振動の有無を決めるという仮定 (Fletcher, 1993) について検証する.実際の火山でも,間欠的に振動が発生することがある.ストロー笛はそのような現象の理解につなげられると期待している.