[O06-P01] ホットプレートと偏光シートを使った硝酸アンモニウムの相転移観察
キーワード:相転移、その場観察、硝酸アンモニウム、偏光顕微鏡
鉱物の相転移等を観察するには高価で特殊な装置が必要なことが多いが、教育目的で実験を体験してもらうためには、簡単で安価な方法が望ましい。硝酸アンモニウム(NH4NO3)は、融点が175 oCと低く、家庭用ホットプレートでも融解させることができる。さらに、硝酸アンモニウムには融点から室温までに4つの相(高温側から立方晶、正方晶、直方晶I、直方晶II相)が知られており、偏光板を利用すると冷却過程でそれらの相転移を簡単に逐次観察できる。発表者は以前大学においては偏光顕微鏡学生実験の1つとしてこれを活用し、また研究所見学者のための参加型の実験を行なってきた。その方法を紹介する。
必要なのは、硝酸アンモニウム粉末、偏光シート(2枚)、スライドガラス、カバーガラスとホットプレートである。硝酸アンモニウムは家庭では入手しづらくなっているが、教育機関では簡単に入手可能である。偏光シートは、大きなシートなら、手頃なサイズにカットしておく。2枚のシートが必要である。まず、スライドガラスをホットプレート上に置いて加熱する。スライドガラスの上に硝酸アンモニウムの粉末を少量載せる。次に粉末の上にカバーグラスをそっと載せる。硝酸アンモニウムが融けると、ガラス間の薄い膜となり、自動的にプレパラートが出来上がる。その場観察をしない時は、ホットプレートからスライドガラスを降ろして、冷却してから観察する。この場合に観察できるのは、まだ少し暖かい時は直方晶I相で、室温まで完全に冷えると直方晶II相になる(転移温度は約32 oC)。どちらも偏光シート2枚を重ねて暗くした状態(クロスニコル)で、シートの間に挟むと非常にカラフルに見える。これはそれらの相が複屈折を示すことによる。時には直方晶IからII相への転移がちょうど見られることもある。こうして作ったプレパラートは、偏光シートとも合わせて、偏光の学習に最適である。また、このプレパラートは岩石薄片の代用として、岩石・鉱物の学習にも使える。この試料の観察は、手に持って太陽光や天井照明に透かして観察してもよいが、最近は「トレース台(ライトボックス)」が数千円で入手できるので、それを点灯させた上に載せて観察するとよい。こうすると複数の人が同時に観察できるので、説明もしやすい。さらに透過照明タイプの実体顕微鏡が利用できれば、試料を拡大して詳しく見ることもできる。試料の冷却速度や空気中から吸った含水量で粒径や組織が変わるので、何度か加熱と冷却を繰り返して、その違いを観察するとよい。
融点からの冷却過程も見ることができると、相転移が逐次観察できる。偏光シートと高温のスライドが直接触れるのは好ましくないので、厚紙で中央の試料が見えるくらいの穴を開けたものを2枚作り、各偏光シートにテープで固定する。ホットプレートから、試料が融けた状態でスライドガラスをピンセットで掴み、偏光シートの厚紙の上に置く。素早くもう一方の偏光シートを厚紙を下側にして、その上に載せる。完全にクロスニコル状態だと、最初の結晶化(融体から立方晶相)は見づらいので、クロスニコルからずらせておいた方が観察しやすい。その後、正方晶、直方晶I、直方晶IIへと転移していく様子を温度の低下とともに観察できる。できれば透過照明型実体顕微鏡やルーペを使って観察して欲しい。高温側の転移は素早く起こるので、冷却速度を下げることが必要になるが、参加者に考えてもらい、アイデアを試すように促すとよい。高校・大学生の場合は、いくつ相転移が観察されるか、偏光での観察から各相の結晶系を推定する、転移の時の組織変化観察などを課題として与えるとよい。岩石学や鉱物学実習の一部としても活用できる。参考に、偏光顕微鏡を使って同様に融けた硝酸アンモニウムの冷却を観察した動画の例をこちらに置いている(http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~masami/pukiwiki/index.php?%B6%B5%BA%E0)。
なお、硝酸アンモニウムは空気中の水分を吸うため、特に乾燥状態で保存しない限り、プレパラートは数時間から数日しか持たず、試料が水溶液となるので注意が必要である。また、ホットプレートを使うため、ヤケドしないように注意する。ピンセット等を用意して、直接高温のスライドガラス等に触れないように指導する。また、転移については、過冷却現象や含水量によっては転移がバイパスされることなどがあるので、その辺も教える側は知っている必要がある。
このような実験を含む見学や講演を惑星物質研究所で実施することが可能ですので、事前にご連絡ください。また、研究所の体験的展示室では、偏光顕微鏡やARサンドボックス(砂の上にAR技術を使って等高線をリアルタイムに投影)を実際に触って楽しむことができます。
必要なのは、硝酸アンモニウム粉末、偏光シート(2枚)、スライドガラス、カバーガラスとホットプレートである。硝酸アンモニウムは家庭では入手しづらくなっているが、教育機関では簡単に入手可能である。偏光シートは、大きなシートなら、手頃なサイズにカットしておく。2枚のシートが必要である。まず、スライドガラスをホットプレート上に置いて加熱する。スライドガラスの上に硝酸アンモニウムの粉末を少量載せる。次に粉末の上にカバーグラスをそっと載せる。硝酸アンモニウムが融けると、ガラス間の薄い膜となり、自動的にプレパラートが出来上がる。その場観察をしない時は、ホットプレートからスライドガラスを降ろして、冷却してから観察する。この場合に観察できるのは、まだ少し暖かい時は直方晶I相で、室温まで完全に冷えると直方晶II相になる(転移温度は約32 oC)。どちらも偏光シート2枚を重ねて暗くした状態(クロスニコル)で、シートの間に挟むと非常にカラフルに見える。これはそれらの相が複屈折を示すことによる。時には直方晶IからII相への転移がちょうど見られることもある。こうして作ったプレパラートは、偏光シートとも合わせて、偏光の学習に最適である。また、このプレパラートは岩石薄片の代用として、岩石・鉱物の学習にも使える。この試料の観察は、手に持って太陽光や天井照明に透かして観察してもよいが、最近は「トレース台(ライトボックス)」が数千円で入手できるので、それを点灯させた上に載せて観察するとよい。こうすると複数の人が同時に観察できるので、説明もしやすい。さらに透過照明タイプの実体顕微鏡が利用できれば、試料を拡大して詳しく見ることもできる。試料の冷却速度や空気中から吸った含水量で粒径や組織が変わるので、何度か加熱と冷却を繰り返して、その違いを観察するとよい。
融点からの冷却過程も見ることができると、相転移が逐次観察できる。偏光シートと高温のスライドが直接触れるのは好ましくないので、厚紙で中央の試料が見えるくらいの穴を開けたものを2枚作り、各偏光シートにテープで固定する。ホットプレートから、試料が融けた状態でスライドガラスをピンセットで掴み、偏光シートの厚紙の上に置く。素早くもう一方の偏光シートを厚紙を下側にして、その上に載せる。完全にクロスニコル状態だと、最初の結晶化(融体から立方晶相)は見づらいので、クロスニコルからずらせておいた方が観察しやすい。その後、正方晶、直方晶I、直方晶IIへと転移していく様子を温度の低下とともに観察できる。できれば透過照明型実体顕微鏡やルーペを使って観察して欲しい。高温側の転移は素早く起こるので、冷却速度を下げることが必要になるが、参加者に考えてもらい、アイデアを試すように促すとよい。高校・大学生の場合は、いくつ相転移が観察されるか、偏光での観察から各相の結晶系を推定する、転移の時の組織変化観察などを課題として与えるとよい。岩石学や鉱物学実習の一部としても活用できる。参考に、偏光顕微鏡を使って同様に融けた硝酸アンモニウムの冷却を観察した動画の例をこちらに置いている(http://www.misasa.okayama-u.ac.jp/~masami/pukiwiki/index.php?%B6%B5%BA%E0)。
なお、硝酸アンモニウムは空気中の水分を吸うため、特に乾燥状態で保存しない限り、プレパラートは数時間から数日しか持たず、試料が水溶液となるので注意が必要である。また、ホットプレートを使うため、ヤケドしないように注意する。ピンセット等を用意して、直接高温のスライドガラス等に触れないように指導する。また、転移については、過冷却現象や含水量によっては転移がバイパスされることなどがあるので、その辺も教える側は知っている必要がある。
このような実験を含む見学や講演を惑星物質研究所で実施することが可能ですので、事前にご連絡ください。また、研究所の体験的展示室では、偏光顕微鏡やARサンドボックス(砂の上にAR技術を使って等高線をリアルタイムに投影)を実際に触って楽しむことができます。