JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG24] 宇宙・惑星探査の将来計画および関連する機器開発の展望

コンビーナ:吉岡 和夫(東京大学大学院新領域創成科学研究科)、笠原 慧(東京大学)、小川 和律(宇宙航空研究開発機構)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)

[PCG24-03] Development of an Ion Source for Future Solar System Explorations

*柳瀬 菜穂1笠原 慧1斎藤 義文2横田 勝一郎3平原 聖文4川島 桜也1 (1.東京大学、2.宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所、3.大阪大学、4.名古屋大学)

キーワード:太陽系探査、イオン源、質量分析器

近年の月探査機により、月極域の太陽が当たらない極低温領域には水を含む揮発性物質が存在している可能性が指摘されている。しかし、これまでの観測は、多くの研究者が水氷の存在を認めるような直接的な情報は得られていない。例えば、月極域水氷の観測に多く用いられてきた中性子分光は水素原子を観測する手法であったため、極域に水素濃集があることが判明したものの、それが水分子だと断定することはできなかった。月極域水氷が存在するかどうかを明確にするためは、水分子の同定を行える、直接的な観測を行う必要がある。宇宙航空研究開発機構(JAXA)は月極域水氷の濃集過程や起源の解明、さらには将来の人類の月面活動における資源利用可能性の調査を目的とした、月南極域着陸探査を計画している。本探査計画では水分子の同定と水氷の同位体組成の調査を行うため、月面にローバーを展開し、その場質量分析を行うことが計画している。質量分析器は試料のイオン化部と、質量計測部に分かれる。試料の量や電力などに対して制限の多い探査機に搭載する質量分析器には、低消費電力・高感度であることが求められるが、低消費電力と高感度を両立した、イオン化部はいまだ開発されていない。本研究では、月探査を想定した、従来と同等の消費電力かつ従来より高感度のイオン化部の開発を進めている。本機器は現在宇宙科学研究所(ISAS)にて開発が進められている月・惑星探査用飛行時間型質量分析器にイオンを入射させることを想定し設計した。先行研究では高感度・低消費電力を満たす仕事関数の少ない素材に着目し、酸化イットリアコーティングイリジウムフィラメントが選定された。現在、酸化イットリアコーティングイリジウムフィラメントを用いて探査機搭載用のイオン源の製作を進めている。イオン源の電子軌道を制御する方法として、加速器や走査顕微鏡に用いられる、電場による電子軌道制御を利用している。現在は装置の寸法と印加電圧の最適化を荷電粒子の軌道計算ソフトSIMION7.0を用いて行っている。軌道計算をもとに製作したイオン源の実機試験により、組み立て過程で生じるフィラメントの位置のずれが電子軌道に大きく影響することが分かった。