JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG25] 惑星大気圏・電磁圏

コンビーナ:関 華奈子(東京大学大学院理学系研究科)、今村 剛(東京大学大学院 新領域創成科学研究科)、前澤 裕之(大阪府立大学大学院理学系研究科物理科学科)、寺田 直樹(東北大学大学院理学研究科)

[PCG25-P02] ピリカ望遠鏡による天王星の雲変化の多波長撮像観測

*杉山 玄己1高橋 幸弘1佐藤 光輝1高木 聖子1佐藤 佑樹1大野 辰遼1横田 駿太郎1 (1.北海道大学)

キーワード:天王星、多波長観測、惑星大気

天王星は初めて観測されたときの様子から、木星のような激しい気象変化がないと考えられてきた。しかし探査機ボイジャー2号やハッブル宇宙望遠鏡、ケック望遠鏡の観測から天王星には数十年単位の長い時間スケールの現象と、数日〜数週間単位の短い時間スケールの現象が知られるようになった。Hammel et al. (2007) では、天王星の公転周期の半分である20年ほどのスケールで、yバンド(551 nm)における明るさの変化が報告され、Irwin et al. (2010)やPeter et al. (2015)などではHバンド(1600 nm)において明るい雲の存在が報告されている。しかし、週〜月単位の雲の変化についての観測事例は少なく、これらの雲現象の時間スケールは十分に解明されていない。これまでの観測は1年に1度か2度、数日間の観測例が多い。なぜなら高い空間分解能を持つ大型の望遠鏡や宇宙望遠鏡は観測時間を確保するのが難しいからである。本研究では数カ月間に渡る可視光域での多波長撮像観測を行った。これにより雲の変化の時間スケールを解明することが本研究の目標である。本研究では、北海道大学が所有する主鏡有効径1.6 mのピリカ望遠鏡を用いた。この望遠鏡は北海道名寄市に位置する地上望遠鏡である。観測装置としてカセグレン焦点に可視光マルチスペクトル撮像観測装置(MSI)(Watanabe et al., 2012)を備え、惑星の観測に主に使われている。MSIは3.3 x 3.3分角の視野を持ち、分解能は0.389 秒角/pixelである。さらに、400 nmから1100 nmまでの範囲で150 msで透過波長を変化させることができる液晶可変フィルターを備えている。本研究ではMSIを用いて650 nmから900 nmの波長に渡る多波長撮像観測を2019年9月から2020年2月まで延べ6か月に渡り行い、23夜分のデータを得た。しかし、名寄市のシーイングはおよそ3秒角であり、天王星の視直径とほぼ同じである。そこで雲の存在を確かめるために、大気中に多く存在し、可視光域に強い吸収を持つメタンの吸収の深さが雲によって変化することを用いる。雲が存在すれば、入射光は雲で反射されるので吸収は雲がない場合に比べて少なくなる。そのためメタンの吸収のある660 nm付近と889 nmでの反射フラックス(Fmethane)と、吸収の少ない650 nm 、800 nm波長での反射フラックス(Fnormal)を導出し、比較する。雲があれば雲のないときと比べてFmethane/Fnormalは大きくなる。これを利用し、雲の存在によるFmethane/Fnormalの変化の理論値と実際の観測を比較することで雲の変化を推定することができる。 今回の発表では2019年の9月から11月にかけて取得したデータの初期解析結果を紹介する。