[PCG26-06] 原始惑星系円盤の永年重力不安定性によるダスト集積と多重リング形成
キーワード:原始惑星系円盤、不安定性、数値計算
アルマ望遠鏡による近年の原始惑星系円盤の観測によって,ダスト円盤内に様々な構造が発見されている.その中で最も多く観測されている構造はリングやギャップなどの軸対称構造であり,惑星の存在もしくは今まさに進行している微惑星形成を示唆していると考えられている.もし惑星がそれらの円盤にすでに存在する場合,従来の理論と異なり非常に早い微惑星/惑星形成が必要である.従って,円盤中でのダスト-ガスの動力学に立ち戻り,ダスト濃集と微惑星形成を促進する物理過程を探ることが重要である.永年重力不安定性はその候補のひとつである.もともと永年重力不安定性は自己重力的に安定な円盤でも微惑星形成を起こすことのできる機構として提案された.また最近の研究によって,永年重力不安定性自体が観測された多重リング構造の起源になり得ることも示されている.しかし以上の先行研究は局所線形解析に基づいたものであるため,大局的な円盤構造の形成過程や最終的にどの程度ダストを集積できるかなどは議論できない.そこで本研究では永年重力不安定性の数値シミュレーションを行い,動径方向に広がった円盤で不安定性の線形/非線形成長過程を調べた.シミュレーションの結果,(1)いわゆるダストのドリフトが起こる円盤でも永年重力不安定性は成長できること,(2)不安定性の非線形成長によってダストリングが非常に細くなること,(3)その結果リング内でダストの面密度が初期の10倍以上高くなることがわかった.非線形成長によってダストが10倍濃集すると,いわゆるドリフト速度が遅くなり,またダストの付着合体の時間スケールを10倍短くすることができる.従って永年重力不安定性によって形成されたリング内では効率的なダスト成長が期待できる.ダストのサイズが十分大きくなってしまうと,形成された構造はリングというよりもむしろギャップとして観測され得る.