JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG26] アルマによる惑星科学の新展開

コンビーナ:長谷川 哲夫(自然科学研究機構 国立天文台)、武藤 恭之(工学院大学 教育推進機構)、飯野 孝浩(東京大学情報基盤センター)、下条 圭美(国立天文台)

[PCG26-P02] ALMAによる惑星形成研究の最近の進展とngVLAとの関連も含めた将来の展望

*百瀬 宗武1 (1.茨城大学大学院理工学研究科(理学野))

キーワード:原始惑星系円盤、系外惑星、電波観測、アルマ、次世代ミリ波センチ波干渉計

系外惑星が示す多様性の起源を理解するために,原始惑星系円盤の観測は必要不可欠である。最近の数年間で,ALMA観測は2つの方向性で大きな進展をもたらした。第一に,原始惑星系円盤中のリングギャップ構造が普遍的な存在であることを明らかにした点である。赤外超過を顕著に示す近傍の円盤20個に対して高解像度撮像を行ったALMA Large Program "DSHARP" (Disk Substructures at High Angular Resolution Project)は,そのほとんど全ての観測対象に対して,惑星によって掘られた可能性のあるギャップを捉えた。第二に,形成途上の惑星存在のより直接的な証拠となりうる,周惑星円盤の兆候を複数検出した点である。2つのTタウリ型星TW HyaやPDS 70では,周惑星円盤に対応する可能性がある小スケールのダスト連続波源が捉えられた。またHD 163296に対するCO観測では,ガス惑星降着期に予想された子午線流(meridional flows)に伴うとみられる特徴が検出された。これらは円盤中で惑星形成が実際に起こっていることを強く示唆するが,一方でリングギャップ構造から推定される惑星パラメータはまだ系外惑星の統計が得られている領域とは良く対応していない。両者の直接比較には,より大きな公転半径にある惑星の探索と,円盤のより内域におけるギャップの探索とが必要である。
この講演ではこれらALMAの成果を踏まえた上で,今後の原始惑星系円盤観測における次世代ミリ波センチ波干渉計(ngVLA)の重要性についても議論する。ngVLAはALMAに比べてより長波長のダスト連続波を10ミリ秒角以下の解像度で観測可能とする見込みで,ALMAの観測波長帯では光学的に不透明になってしまう円盤内域を見通して惑星ギャップを探索できると予想される。ALMAが低柱密度領域での深い惑星ギャップ探索に威力を発揮するのに対し,ngVLAは高柱密度領域での浅い惑星ギャップ探索に威力を発揮する。この2つの装置の組み合わせは,複数惑星が含まれる惑星系の形成を研究する上で強力なコンビネーションになるはずである。またngVLAがカバーする波長帯は,より大型有機分子の探索や,窒素を含むホルムアミドやグリシンといった分子の基本建材となるアンモニアの探索を可能にする。これらの分子輝線は,アストロバイオロジーや太陽系内の小天体探査ミッションとのシナジーにとっても,非常に重要なプローブになると考えられる。