[PCG27-P03] 量子化学計算によるC2H2N2の形成過程の探求
キーワード:核酸塩基、星間物質、プラズマ反応、量子化学計算
生物のタンパク質を形作るアミノ酸は左型の鏡像異性体をもつ。隕石から検出されたアミノ酸からもこのホモキラリティーが検出されていることから、地球の生命発生のきっかけが宇宙に起源をもつ可能性が議論されている。一方、地球の生命の設計図であるDNAの構成要素である核酸塩基の初期の起源はまだよく分かっておらず、現在の生物はデノボ合成から核酸を形成することも出来る。しかし隕石からも核酸塩基が検出されていることから、初期の生命の核酸塩基の一部が宇宙に起源をもつ可能性も十分に考えられる。核酸塩基の1つアデニンC5H5N5は、星間物質としてだけでなく、実験室の氷の表面やプラズマの放電、宇宙線の照射などによっても形成されている。しかし、その形成過程はまだ良く分かっていない。C5H5N5を形成する過程でC2H2N2を経由している可能性があり、E-HNCHCNの観測がSgr B2(N)などでも試みられている(Zaleski et al. 2013)。HNCHCNはHCNの重合によって形成されている可能性もあるが、反応の活性化エネルギーが高く、分子雲コアなどの気相ではこの反応は進みにくいと考えられている。
本研究では、C5H5N5が形成される我々のプラズマ放電でも、HNCHCNと同じ54の質量数をもつ分子が検出されていることから、E-HNCHCNやZ-HNCHCNがHCNの重合以外の反応で形成される可能性について、Hartree-Fock法による量子化学計算の検討を行った。基底関数には、DZP基底の6-31G(d,p)を用いた。その結果、例えばCH3CN+NH、CH2CN+NH2などでは、NH2CH2CNなどの放熱反応の後、高い活性化エネルギをもつ遷移状態を経由してE/Z-HNCHCNを形成するルートや、NH2CH2CN の後にNH3CHCNなどを経由することで、途中の活性化エネルギーを抑えてE/Z-HNCHCNに至る解も存在する可能性もあることが分かった。本講演では、これら一連の解析結果について報告する。
本研究では、C5H5N5が形成される我々のプラズマ放電でも、HNCHCNと同じ54の質量数をもつ分子が検出されていることから、E-HNCHCNやZ-HNCHCNがHCNの重合以外の反応で形成される可能性について、Hartree-Fock法による量子化学計算の検討を行った。基底関数には、DZP基底の6-31G(d,p)を用いた。その結果、例えばCH3CN+NH、CH2CN+NH2などでは、NH2CH2CNなどの放熱反応の後、高い活性化エネルギをもつ遷移状態を経由してE/Z-HNCHCNを形成するルートや、NH2CH2CN の後にNH3CHCNなどを経由することで、途中の活性化エネルギーを抑えてE/Z-HNCHCNに至る解も存在する可能性もあることが分かった。本講演では、これら一連の解析結果について報告する。