JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-CG 宇宙惑星科学複合領域・一般

[P-CG27] 宇宙における物質の形成と進化

コンビーナ:野村 英子(国立天文台 科学研究部)、大坪 貴文(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)、三浦 均(名古屋市立大学大学院システム自然科学研究科)、瀧川 晶(東京大学 大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻)

[PCG27-P04] 原始惑星系円盤における氷マントル反応による複雑な有機分子生成

Wei Chen-En1、*野村 英子2Walsh Catherine3Theule Patrice4 (1.東京工業大学 地球惑星科学系、2.国立天文台 科学研究部、3.リーズ大学、4.エクス・マルセイユ大学)

キーワード:原始惑星系円盤、星間化学、有機分子生成

近年、大型電波干渉計ALMAなどにより、原始惑星系円盤において複雑な有機分子の観測が可能になった。一方で、ロゼッタ・ミッションにより、チュリモフ・ゲラシメンコ彗星中の複雑な有機分子がその場観測され、その生成過程が議論されている。
 本研究では、特に氷マントル反応に着目し、円盤内における有機分子生成過程を調べた。具体的にはまず、氷マントル反応の実験結果をもとに、氷の結晶化に誘発される氷マントル反応の反応率を定式化し、氷マントル反応ネットワークを、気相反応・塵表面反応の化学反応ネットワークに取り入れた。また、氷マントル反応をおこすのに必要な熱源として、若い原始星天体の観測から示唆されている周期的なFU Ori型アウトバーストを考慮した。
 計算の結果、温度が120K以上の状態では、氷マントル反応の時間尺度がアウトバーストの時間尺度に比べ十分短くなり、効率よく氷マントル反応がおこることを示した。FU Ori型アウトバーストは、ガス降着率の増加に伴う円盤温度の上昇で解釈される。計算の結果、彗星形成領域において氷マントル反応が効率よく起こり、チュリモフ・ゲラシメンコ彗星で観測されたカルバミン酸アンモニウム塩を豊富に生成するためには、原始太陽系星雲が、1年あたり10-5太陽質量の質量降着率でFU Ori型アウトバーストをおこしていた可能性があることを示した。本研究ではさらに、氷のマントル反応率の、氷マントルの構造、すなわち小天体形成までの熱史への依存性についても議論している。