JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] 太陽圏・惑星間空間

コンビーナ:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、坪内 健(電気通信大学)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

[PEM11-05] 次世代惑星間空間シンチレーション観測用2次元フェーズドアレイ装置の開発

*岩井 一正1徳丸 宗利1藤木 謙一1 (1.名古屋大学 宇宙地球環境研究所)

キーワード:太陽圏、惑星間空間シンチレーション、フェーズドアレイ、観測装置、電波望遠鏡、コロナ質量放出(CME)

太陽風の加速・伝搬過程、コロナ質量放出(CME)の太陽圏内における伝搬過程、太陽圏のグローバルな構造、およびその太陽活動に伴う変動など、太陽圏物理学には未解明の重要な問題が多く残されている。また、これらは宇宙天気予報の観点からも近年重要度が増している。太陽風中の擾乱が電波を散乱することで惑星間空間シンチレーション(IPS)が発生する。名古屋大学では327MHz帯域において、最大約4000平方メートルの物理開口面積を持つシリンドリカルパラボラアンテナからなる独自のIPS観測装置を開発し、国内3カ所に設置することで、地上電波観測から太陽風の速度と密度の測定に取り組んできた。一方、近年の特異な太陽活動に伴う複雑かつ低密度な太陽風構造の導出のためには、より詳細で稠密な観測データが必要となってきた。また、より正確な宇宙天気予報のためにはCMEの形状を正確に検出する必要があることも分かってきた。本研究では、次世代の太陽圏研究に向けたIPS観測装置の検討を行うとともに、実証実験機の開発を行った。
 太陽風速度分布をより詳細に導出するために、より多くの電波天体を観測できるようアンテナ部はダイポールアンテナによる2次元平面フェーズドアレイによる広視野な光学系を検討した。また駆動部を無くすことで降雪や台風などの自然災害にも強く通年での観測ができる観測系を検討した。受信機では信号をリアルタイムにデジタル処理することで、複数の方向を同時に指向するデジタルマルチビームフォーミングを採用し、1日に複数回全天をスキャンすることで、より高速なCMEの追跡を可能にする。また、特定の電波天体の連続追尾観測から、CMEの通過を待ち受け観測し、その形状を推定できることも期待される。本計画における最大の開発要素は約1000台必要となるデジタル信号処理部である。そこで、本観測専用のデジタルボードを、AD変換機とFPGA等を用いて設計・開発した結果、十分に低コストで目標の性能を実現できることが分かった。完成したプロトタイプ機は8入力の信号を同時に処理でき、37cm x 27cmのサイズで、十分に量産可能な大きさに収まった。