JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM11] 太陽圏・惑星間空間

コンビーナ:岩井 一正(名古屋大学 宇宙地球環境研究所)、成行 泰裕(富山大学学術研究部教育学系)、坪内 健(電気通信大学)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)

[PEM11-P03] 3He過剰太陽高エネルギー粒子現象におけるⅢ型電波バーストの出現特性について

*藤本 達也1三澤 浩昭1土屋 史紀1小原 隆博1 (1.東北大学)

キーワード:太陽、太陽高エネルギー粒子、電波バースト、粒子加速

SEP(Solar Energetic Particle)は、太陽面での爆発現象であるフレアやコロナ質量放出(CME)などに伴って放出される10keVから数10GeVの陽子、電子、重イオンである。SEPの出現様相は、その組成比やフラックスの時間変化からimpulsiveとgradualの二つのタイプに分類される。また、特にimpulsive SEPの発生時には、フレアに伴って発生する突発的な電波の放射であるⅢ型バーストと呼ばれる現象が、数十-数百MHzの帯域においてよく観測されることが報告されている[Cane et al., 1986; McDowell, 2003]。Ⅲ型バーストは、磁気リコネクションによって加速された電子ビームが開いた磁力線に沿って伝搬する際に、背景プラズマとの相互作用によってプラズマ密度に対応したプラズマ波を励起し、そのプラズマ波が電磁波へと変換され生成されたものと考えられている。出現周波数はGHz帯からkHz帯におよび、時間とともに周波数が減少する負の周波数ドリフトを示す。そのスペクトル構造は加速された非熱的な電子ビームの運動の様子を反映していると考えられる。
impulsive SEPは電子主体のイベントとも呼ばれ、コロナの一般的な組成と比較して4Heに対する3Heの割合が高く、また酸素に対する鉄の割合が高いという、特定のイオン種が高い存在比を示す特徴を持つ。この特徴の成因として、地球磁気圏で生じている高エネルギー電子降り込み域で発生する電磁イオンサイクロトロン波(EMIC波)現象とのアナロジーから、太陽大気中のⅢ型バーストを生成する電子ビームの加速領域においてもEMIC波が存在し、これと共鳴するHeやFeイオンの選択的なフラックス増大を引き起こすとするアイディアがTemerin and Roth [1992]により提案された。この通りである場合、impulsive SEPのフラックスとⅢ型バーストのスペクトル構造の間には粒子加速に関わる特徴が含まれることが想定される。しかしそのような観点でSEPのフラックスとⅢ型バーストのスペクトル構造との比較を行った報告は少なく、両者の関係については明らかにされていない。そこで、本研究では、impulsive SEP現象とⅢ型バーストの詳細な対照解析を行い、両者の関係を精査することを目的とする。
本研究では、SEPのデータとしてはL1点に滞留し太陽・太陽圏観測を行うACE, WIND, SOHO衛星の粒子観測データを用い、一方、太陽電波データとしてはWIND衛星および東北大学太陽電波観測装置AMATERAS他の国内外の地上電波望遠鏡の電波スペクトルデータを用いて、impulsive SEP現象出現時のイオンおよび電子の広いエネルギー範囲のフラックスのタイムプロファイルと、Ⅲ型電波バーストのスペクトル構造(ドリフトレート、微細構造)の比較解析を行っている。
本講演では統計解析に基づく両者の関連性について報告を行うとともに、impulsive SEPの加速過程について議論を行う予定である。

謝辞: 粒子観測データはACE Science Center、NASA、Turku大学Space Research Laboratoryにより提供された。ACE, WIND, SOHOの各運用グループに感謝申し上げる。