JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM13] Dynamics of Magnetosphere and Ionosphere

コンビーナ:中溝 葵(情報通信研究機構 電磁波研究所)、尾崎 光紀(金沢大学理工研究域電子情報学系)、藤本 晶子(九州工業大学)、佐藤 由佳(日本工業大学)

[PEM13-P07] 地上光学–欧州非干渉散乱レーダー–あらせ衛星観測に基づくECH波と電離圏F領域電離及び脈動オーロラの関係

*吹澤 瑞貴1坂野井 健1小川 泰信2細川 敬祐3笠原 禎也4松田 昇也5松岡 彩子6 (1.東北大学大学院理学研究科惑星プラズマ・大気研究センター、2.国立極地研究所、3.電気通信大学大学院情報理工学研究科、4.金沢大学総合メディア基盤センター、5.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所、6.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 太陽系科学研究系)

キーワード:静電波、脈動オーロラ、欧州非干渉散乱レーダー、ERG (あらせ) 衛星

サブストームが起きると内部磁気圏の赤道面では様々なプラズマ波動が励起される。特に、真夜中から朝側にかけて励起されるプラズマ波動としてコーラス波と静電電子サイクロトロン高調 (ECH) 波がある。これらの波動はサイクロトロン共鳴によって電子のピッチ角を散乱することができ、ロスコーン内に散乱された電子は地球大気中に降り込み、ディフューズオーロラ発光を引き起こす。コーラス波の共鳴エネルギーは数keVから数十keV、ECH波の共鳴エネルギーは数百eVから数keVであるため、コーラス波は電離圏D–E領域のオーロラ発光に、ECH波はF領域のオーロラ発光に寄与すると考えられる (Fukizawa et al., 2018, GRL)。コーラス波とD-E領域の脈動オーロラ及び電離現象については先行研究によって明らかにされてきたが (e.g., Kasahara et al., 2018, Nature; Miyoshi et al., 2015, JGR: Space Phys.; Nishimura et al., 2010, Science)、ECH波とF領域の脈動オーロラ及び電離現象についてはあまり理解されていない。そこで、本研究では地上光学、非干渉散乱レーダー及び衛星による観測に基づき、ECH波とF領域脈動オーロラ及び電離現象の関係ついて調べる。

まず、2016年9月から2019年12月の期間の全天カメラと欧州非干渉散乱 (EISCAT) レーダーの観測データを解析した。ノルウェーのトロムソ (69°35’N, 19°14’E, 磁気緯度: 66°12’N) に設置されている全天カメラ (フィルター透過波長: 560 nm ± 5 nm) により、磁気天頂において脈動オーロラが観測されていたイベントの内、EISCATレーダーによってF領域で電離が観測されたイベントの割合は50%であった。波長557.7 nm の脈動オーロラが発生しているとき、磁気赤道面付近ではその駆動源となるコーラス波動が存在すると考えられる。また、コーラス波が励起されているときECH波も磁気赤道面で励起されている確率が高いことが衛星観測データの統計解析によって報告されている (Meredith et al., 2009, JGR: Space Phys.)。そのため、今回検出されたF領域電離イベントの駆動源はECH波の可能性が高い。

また、2019年9月26日01:40–03:00 UTにはあらせ衛星の電離圏におけるフットプリントが全天カメラの視野内に位置していた。このときのトロムソの天気はくもりで全天カメラによって脈動オーロラは観測されていなかったが、あらせ衛星ではコーラス波とECH波が観測されており、EISCATレーダーでは電離圏D–E領域とF領域で電離が観測された。あらせ衛星によって観測されたコーラス波とECH波は一部排他的に観測されており、EISCATレーダーによって観測されたD–E領域電離とF領域電離も同様の特徴を示していた。IGRF磁場モデルから導出した高度110 kmにおけるあらせ衛星のフットプリントの位置はEISCATレーダー観測点よりも約170 km南側位置しており完全な同時観測ではないが、これらの結果はコーラス波とD-E領域電離およびECH波とF領域電離に関係があることを示唆する。

今後はD–E領域で発光する波長427.8 nmの脈動オーロラと主にF領域で発光する波長844.6 nmの脈動オーロラ分光観測データの解析を行い、それぞれの発光の時間変化にコーラス波やECH波の時間変化と類似した特徴があるかなどを調べる。