JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙天気・宇宙気候

コンビーナ:片岡 龍峰(国立極地研究所)、Antti A Pulkkinen(NASA Goddard Space Flight Center)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、坂口 歌織(情報通信研究機構)

[PEM17-03] 国際宇宙ステーションからのデジカメ観測が示唆する脈動オーロラの広域空間特性

*南條 壮汰1穂積 裕太1細川 敬祐1片岡 龍峰2,3三好 由純4大山 伸一郎2,4,5尾崎 光紀6塩川 和夫4栗田 怜4 (1.電気通信大学、2.国立極地研究所、3.総合研究大学院大学複合科学研究科極域科学専攻、4.名古屋大学宇宙地球環境研究所、5.オウル大学、6.金沢大学)

キーワード:国際宇宙ステーション、デジタル一眼レフカメラ、オーロラ、脈動オーロラ

国際宇宙ステーション(International Space Station: ISS)から、デジタル一眼レフカメラ(デジカメ)を用いて都市や海洋、大気などの様子が撮影され、連続カラー画像が NASA のウェブサイトで公開されている。我々は、公開されている画像の中にオーロラが含まれているものを抽出し、背景として写っている街明かりをマーカーにして地理座標上に投影することによって、オーロラの研究、特に脈動オーロラの広域特性の解析に活用することを提案してきた [Nanjo et al., 2020, submitted]。この ISS からのデジカメ観測は 1 秒以下の時間分解能と、地上全天カメラ 3-4 台分の広い視野を持ち、約10分の間にローカルタイム方向に 4-5 時間分に相当する領域を俯瞰的に撮像することができる。脈動オーロラの明滅周期は 2-40 秒、空間スケールは数 10 km 程度であるため、投影されたデジカメ画像によって、脈動オーロラの時間変動・空間変動の双方を十分に分解することが可能である。本研究では、複数の脈動オーロライベントについて投影された連続画像から明滅周期を導出し、その MLT 依存性についての解析を行ったが、明滅周期が MLT に依存しているという傾向を、すべてのイベントに共通するものとして見いだすことはできなかった。次に、デジカメ画像が RGB の 3 チャネルを持つことに着目し、色の違いについての解析を行った。オーロラの色と RGB チャネルの関係は、最も明るい酸素原子の発光である 557.7 nm が G チャネルに対応し、427.8 nm を代表とする窒素分子のバンド発光が B チャネルに対応すると考えられる。窒素分子を発光させる電子のエネルギーは、酸素原子を発光させる電子のそれに比べて相対的に高いため、B チャネルと G チャネルの輝度の比(B/G 比)を用いて降込電子の特性エネルギーに関する情報が得られるのではないかと考え、複数例について B/G 比の解析を行った。その結果、B/G の比は、1) ディスクリートオーロラの領域よりも脈動オーロラの領域において高くなること、2) 脈動オーロラの OFF-time (暗いタイミング)に対して ON-time (明るいタイミング)で高くなること、3) 真夜中よりも朝側の MLT で高くなること、がわかった。これらの結果は、脈動オーロラ電子のエネルギーについてこれまでに知られている傾向と一致するものであり、デジカメで得られた B/G 比を降込電子エネルギーのプロキシとして使用できることを示唆している。本大会では、ここで得られた結果の背景にあるプロセスを、脈動オーロラとの関連が指摘されているコーラス波動の特性を踏まえて議論する。