JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-EM 太陽地球系科学・宇宙電磁気学・宇宙環境

[P-EM17] 宇宙天気・宇宙気候

コンビーナ:片岡 龍峰(国立極地研究所)、Antti A Pulkkinen(NASA Goddard Space Flight Center)、草野 完也(名古屋大学宇宙地球環境研究所)、坂口 歌織(情報通信研究機構)

[PEM17-P14] 中国電力山口電力所管内2変電所における地磁気誘導電流

*橋本 久美子1北村 健太郎2菊池 崇3海老原 祐輔4 (1.吉備国際大学、2.徳山工業高等専門学校、3.名古屋大学、4.京都大学)

キーワード:地磁気誘導電流、低緯度、誘導電場、サブストーム、地磁気急始

中国電力株式会社山口電力所の協力を得て、東山口変電所(山口県周南市)において2018年3月23日からGIC計測を開始した。本研究の目的は、磁気嵐やオーロラ嵐などの宇宙天気事象が、低緯度の地磁気誘導電流(GIC)に与える影響を定量的に検証することである。特に中国地方はほぼ地磁気緯度線に沿って東西に伸びる海岸線が特徴で、基幹送電線は、山陰と山陽地方の海岸線にほぼ平行に長く伸びるものと、山陽と山陰を南北に結ぶもので構成されたシンプルな構造である。そのため、磁気嵐など宇宙天気事象にともない生じるGIC変動に対する地磁気変動の南北成分(Bx)と東西成分(By)の寄与の切り分けに適すると予想される。前回(SGEPSS秋季大会2018)、約6ヶ月間のGIC測定データと吾川(京都大学地磁気世界資料解析センター)の磁力計データの相関解析の結果を報告した。磁気急始、地磁気脈動、サブストームポジティブベイ、非対称赤道環電流などの様々な時間スケールの宇宙天気事象において、東山口変電所のGICは多くの場合、By成分あるいはByの誘導電場(Ex)と高い相関を示すことを報告した。さらに本研究では、2019年3月26日に、新山口変電所(山口県美弥市)にGIC計測器を設置した。新山口変電所は中国電力管内の最西端に位置し、山陰地方の西島根変電所(島根県益田市)との間は中国西幹線で、山陽地方の東山口変電所とは新山口幹線で結ばれている。一方、西側は関門海峡を超えて九州電力管内に繫がるという位置にある。今回、東山口変電所と新山口変電所のGICデータを用いて、前述の宇宙天気事象発生時のGIC強度とその地磁気成分依存性を解析した。その結果、磁気急始やサブストームポジティブベイ発生時のGICは両観測点の間で相関が非常に高く、また地磁気の東西By成分と相関関係が高い傾向が確認された。一方、GIC強度は、新山口変電所で東山口変電所より常に大きく、サブストームポジティブベイに伴うGICは約2倍となる。磁気嵐発生時のGICはさらに強度差が大きくなる傾向が見られ、4倍を超える事例が確認された。これらのGIC強度の差異は、中国電力送電網における変電所の位置によると考えられる。東山口変電所は山陽地方を東西に伸びる基幹送電線(新山口幹線と東山口幹線)の中継点に位置するため、中性線で両基幹線のGICが打ち消しあう効果があると予想される。一方、新山口変電所は、西に伸びる山陰と山陽の2本の基幹送電線が合流(分岐)する位置にあるため、GICの増幅に効くと考えられる。本研究では、さらに地磁気変動から推定される誘導電場とGICとの間の相関解析の結果を議論する。