JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS02] 月の科学と探査

コンビーナ:西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、鹿山 雅裕(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、長岡 央(宇宙航空研究開発機構)、仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)

[PPS02-12] アルテミス計画参画に向けた月のプラズマ・ダスト環境に関する検討

*臼井 英之1西野 真木2並木 則行3稲富 裕光2大竹 真紀子2諸田 智克4臼井 寛裕2 (1.神戸大学 大学院 システム情報学研究科、2.宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所、3.国立天文台、4.東京大学 理学系研究科)

キーワード:アルテミス計画、月プラズマ環境、月ダスト、月磁気異常、太陽風、水

NASAアルテミス計画への日本参画決定を受けて、JAXA国際宇宙探査専門委員会理学検討メンバーにより理学的および工学的観点からの月環境探査に関する検討が昨年末から集中的に行われ、その検討結果は報告書にまとめられた。本講演では、その背景を簡単に紹介するとともに、理学的検討、特に月のプラズマ・ダスト環境に関する内容について報告する。

地球のような濃い大気を持たない月の表面は、基本的には太陽風プラズマに直接晒されている。そのため、特に日照面では、太陽風プラズマによる二次イオンや高速中性粒子、光電子放出などがあり、表面を覆う微小粒子であるダストは帯電するとともに宇宙風化も見られる。また、月面に点在する局所磁場領域である磁気異常では、太陽風との相互作用により磁気シール領域である小型磁気圏が形成され、その上空では太陽風イオンの反射や様々なプラズマ波動の励起がかぐや衛星により観測されている。また、月には表面起源の中性大気からなる希薄な外圏が存在することも確認されている。このように月表層環境は太陽風との相互作用により複雑な様相を呈する。本講演では、これらの相互作用についてこれまで得られている知見を簡単に紹介するとともに、アルテミス計画に向けての研究課題についても述べる。一方で、月における水の存在の実証が月面探査において重要な課題の一つである。太陽風プロトンと月面水資源との関連を明らかにすることは非常に重要であり、この観点からも議論を行う。

これまで、かぐや衛星により高度100kmから20kmの間の月面上空のプラズマ電磁環境については詳しく観測が行われ多くの知見が得られたが、それ以下の月面に近い領域での表層環境は未知である。月周回ステーションであるGatewayからの超小型衛星放出が可能であれば、それにより20km以下の低高度の月表層環境の観測が期待される。

本講演では、アルテミス計画参画に向けた太陽地球系物理学(STP)観点からの検討事項とその意義、および、国際宇宙探査時代における「月面環境学」の重要性を述べる予定である。