JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS02] 月の科学と探査

コンビーナ:西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、鹿山 雅裕(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、長岡 央(宇宙航空研究開発機構)、仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)

[PPS02-P15] ARTEMISを利用した、月に関連して発生するホイッスラーモード・コーラス放射の探索

*沢口 航1原田 裕己1栗田 怜2 (1.京都大学大学院理学研究科、2.京都大学生存圏研究所)

キーワード:月、コーラス、波動粒子相互作用、ARTEMIS、ホイッスラーモード

ホイッスラーモード・コーラス放射は地球内部磁気圏の特に朝側から昼側にかけて多く見られる自然発生の狭帯域な放射であり、典型的には発生源である磁気赤道における電子ジャイロ周波数の0.2倍から0.8倍の周波数を持つ[Burtis and Helliwell, 1969; Burtis and Helliwell, 1976]。地球内部磁気圏以外では、木星[Coroniti et al, 1980]・土星[Hospodarski et al, 2008]・火星[Harada et al, 2016]の磁気圏でも同様の現象が発生することが知られているが、非磁化かつ大気のない環境では見つかっていない。ホイッスラーモード波は背景磁場に対する電子温度異方性を 源とする線形成長の理論によりその発生が説明される[e.g., Tsurutani et al., 1979]が、それだけではコーラスの特徴的な「囀り」を説明できなかった。そこで、不均質な媒質中でのホイッスラーモード波によりサイクロトロン共鳴電子が効率的にトラップされ[Dysthe, 1971]、共鳴電流が発生して振幅が増幅される[Nunn, 1974; Omura et al,1991]という非線形な効果による理論が提唱された。線形理論によるインコヒーレントな波を種として、サイクロトロン共鳴電子がトラップされることで非線形に振幅が増加するのである。

月は非磁化かつ大気のない天体であるが、太陽風や地球磁気圏のプラズマと、月およびその外気圏、表面、地殻磁場との相互作用により、多くのプラズマ現象が発生する環境である[Halekas et al,. 2012]。特に月面での吸収により電子異方性が生じ、磁気ミラーにより月から離れる電子と月に向かって進む波とのサイクロトロン共鳴でホイッスラーモード波が発生することがわかっている[Harada et al., 2014]。さらに、その振幅は地球内部磁気圏のコーラスと同程度であるため、条件次第ではコーラスと同様の過程で成長し得るかもしれない。そこで、本研究ではARTEMIS衛星による磁場観測データからコーラスに特徴的なrising tone elementを伴うイベントを探し出し、
・非線形成長モデル[Omura et al., 2008]との整合性
・二点同時観測による月関連の波動であることの確認
の二つに関して検証した。