[PPS04-02] ラブルパイル天体におけるクレータースケール則と衝突励起振動に関する実験的研究
キーワード:レゴリス、クレータースケール則、衝突励起振動、衝突実験、ラブルパイル天体
衝突クレーターの形成は太陽系の形成・進化過程において普遍的な現象である。そのため、天体の進化過程を明らかにする上で、衝突クレーターのスケール則が重要となる。一方、近年の小惑星探査から小惑星の中にはラブルパイル天体が存在し、その表面は様々なサイズの低強度ボルダーで覆われている可能性が示唆されてきた。このような天体表面に衝突が起こった際には、標的粒子と衝突体のサイズ比やボルダーの破壊強度がクレーター形成過程に影響を与える可能性がある。しかし、ラブルパイル天体表面のような低強度のボルダー表面に適応できるスケール則はまだわかっていない。また、衝突に伴って発生する振動が天体表面や内部を伝播し表面地形を変化させることがわかっている。そのため、天体の進化過程を考える上で衝突励起振動の系統的な理解、スケール則が重要となる。しかしながら、これまでクレーター形成過程や衝突励起振動に関して、標的粒子と衝突体のサイズ比と標的粒子の破壊の効果を考慮した研究は少なかった。そこで本研究では、低強度粗粒粒子から成る標的に対してクレーター形成実験を行い、クレータースケール則と衝突励起振動に対する標的粒子と弾丸のサイズ比と標的粒子の破壊強度の影響を調べた。
実験は神戸大学の縦型一段式軽ガス銃と宇宙科学研究所の縦型二段式軽ガス銃を用いて行った。標的には直径1~4 mm(細粒)と直径1~4 cm(大玉)の風化凝灰岩を用いたが、それぞれの粒子の圧壊強度は約60 kPaと30 kPaであった。弾丸には直径3 mmの密度の異なる5種類の球(SUS,ジルコニア,アルミナ,ガラス,ナイロン)と、直径2 mmの密度の異なる7種類の球(WC,銅,SUS,ジルコニア,チタン,アルミ,ナイロン)を用いた。直径3 mmの弾丸は速度40~200 m/s、直径2 mmの弾丸は速度1.2~4.5 km/sまで加速して標的表面に対して垂直に衝突させた。衝突クレーターの形成過程は3種類の高速カメラ(それぞれ103,104,105FPS)で撮影した。実験後、標的表面に作られたクレーターの直径を計測した。また、衝突励起振動は衝突点から距離が異なる3か所に加速度計(型番:SV1111,SV1113、固有振動数:30,50 kHz)を設置することで計測した。なお、加速度のデータはチャージアンプ(型番:AD-8725D)を通して、データロガー(取り込み速度:100 kHz)で記録した。
クレーターサイズと弾丸の運動エネルギーの関係を調べた結果、細粒標的に関して低運動エネルギーと高運動エネルギーの間にオフセットが生じることがわかった。このオフセットの結果、約0.14 Jから0.63 Jの領域でクレーターサイズは運動エネルギーとともに変化せず、ほぼ一定となった。さらに高運動エネルギー領域になると、低運動エネルギーの結果の近似線の延長上に乗ることがわかった。また、大玉標的は細粒標的に比べてさらにクレーター形成効率が悪くなることがわかった。πスケーリング則を用いて規格化クレーター半径(πR)と規格化重力(π2)の関係を調べたところ、πRはπ2が大きい領域では砂やガラスビーズ標的等の先行研究とほぼ同じ傾向が見られ、π2が小さい領域では小さくなった。さらに詳しく調べると、πRとπ2の関係は弾丸の種類や衝突速度によって上下2つに分離していることがわかった。このようなオフセットや分離が見られるのは、衝突の運動エネルギーが標的である低強度粒子の破壊に使われているからだと考えられる。以上から、低強度粒子標的におけるクレーター形成過程は、砂標的とは明らかに異なることがわかった。本研究の結果は、クレーター形成効率が低強度標的では砂標的よりも悪くなっていることを示しており、標的粒子の強度がクレーター形成過程に影響を及ぼしていると考えることができる。また、大玉標的ではさらにクレーター形成効率が落ちることから、標的強度に加えて装甲効果が影響している可能性が考えられる。
また、加速度計のデータから衝突励起振動の伝播速度を求めた。細粒標的に衝突速度依存性は確認されず、47.0±7.6 m/s、大玉標的に衝突速度依存性と弾丸密度依存性は確認されず、42.7±4.7 m/sと求められた。二つの伝播速度は似たような値を持つことから、本研究で用いた風化凝灰岩標的は粒径によらず同程度の伝播速度を持つと言える。先行研究と比較すると、石英砂と似た伝播速度を持つことがわかった。また、衝突点からの距離とその場所での最大加速度の関係から、細粒標的、大玉標的ともに衝突速度依存性と弾丸密度依存性があることがわかり、この依存性は衝突点距離をクレーター半径で規格化した距離でスケーリングすることで解消することがわかった。このスケーリングにより、最大加速度の距離減衰に関する以下の経験式を得た。細粒標的に関してはgmax=101.81(x/R)-1.98、大玉標的に関してはgmax=101.77(x/R)-2.21である。
実験は神戸大学の縦型一段式軽ガス銃と宇宙科学研究所の縦型二段式軽ガス銃を用いて行った。標的には直径1~4 mm(細粒)と直径1~4 cm(大玉)の風化凝灰岩を用いたが、それぞれの粒子の圧壊強度は約60 kPaと30 kPaであった。弾丸には直径3 mmの密度の異なる5種類の球(SUS,ジルコニア,アルミナ,ガラス,ナイロン)と、直径2 mmの密度の異なる7種類の球(WC,銅,SUS,ジルコニア,チタン,アルミ,ナイロン)を用いた。直径3 mmの弾丸は速度40~200 m/s、直径2 mmの弾丸は速度1.2~4.5 km/sまで加速して標的表面に対して垂直に衝突させた。衝突クレーターの形成過程は3種類の高速カメラ(それぞれ103,104,105FPS)で撮影した。実験後、標的表面に作られたクレーターの直径を計測した。また、衝突励起振動は衝突点から距離が異なる3か所に加速度計(型番:SV1111,SV1113、固有振動数:30,50 kHz)を設置することで計測した。なお、加速度のデータはチャージアンプ(型番:AD-8725D)を通して、データロガー(取り込み速度:100 kHz)で記録した。
クレーターサイズと弾丸の運動エネルギーの関係を調べた結果、細粒標的に関して低運動エネルギーと高運動エネルギーの間にオフセットが生じることがわかった。このオフセットの結果、約0.14 Jから0.63 Jの領域でクレーターサイズは運動エネルギーとともに変化せず、ほぼ一定となった。さらに高運動エネルギー領域になると、低運動エネルギーの結果の近似線の延長上に乗ることがわかった。また、大玉標的は細粒標的に比べてさらにクレーター形成効率が悪くなることがわかった。πスケーリング則を用いて規格化クレーター半径(πR)と規格化重力(π2)の関係を調べたところ、πRはπ2が大きい領域では砂やガラスビーズ標的等の先行研究とほぼ同じ傾向が見られ、π2が小さい領域では小さくなった。さらに詳しく調べると、πRとπ2の関係は弾丸の種類や衝突速度によって上下2つに分離していることがわかった。このようなオフセットや分離が見られるのは、衝突の運動エネルギーが標的である低強度粒子の破壊に使われているからだと考えられる。以上から、低強度粒子標的におけるクレーター形成過程は、砂標的とは明らかに異なることがわかった。本研究の結果は、クレーター形成効率が低強度標的では砂標的よりも悪くなっていることを示しており、標的粒子の強度がクレーター形成過程に影響を及ぼしていると考えることができる。また、大玉標的ではさらにクレーター形成効率が落ちることから、標的強度に加えて装甲効果が影響している可能性が考えられる。
また、加速度計のデータから衝突励起振動の伝播速度を求めた。細粒標的に衝突速度依存性は確認されず、47.0±7.6 m/s、大玉標的に衝突速度依存性と弾丸密度依存性は確認されず、42.7±4.7 m/sと求められた。二つの伝播速度は似たような値を持つことから、本研究で用いた風化凝灰岩標的は粒径によらず同程度の伝播速度を持つと言える。先行研究と比較すると、石英砂と似た伝播速度を持つことがわかった。また、衝突点からの距離とその場所での最大加速度の関係から、細粒標的、大玉標的ともに衝突速度依存性と弾丸密度依存性があることがわかり、この依存性は衝突点距離をクレーター半径で規格化した距離でスケーリングすることで解消することがわかった。このスケーリングにより、最大加速度の距離減衰に関する以下の経験式を得た。細粒標的に関してはgmax=101.81(x/R)-1.98、大玉標的に関してはgmax=101.77(x/R)-2.21である。