JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 太陽系小天体:リュウグウとベヌーの探査および太陽系小天体全般

コンビーナ:中本 泰史(東京工業大学)、岡田 達明(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、Dante S Lauretta(University of Arizona)、石黒 正晃(ソウル大学物理天文学科)

[PPS07-P05] はやぶさ2搭載レーザー高度計LIDARに基づく小惑星(162173)リュウグウの表面ラフネス

*阿部 新助1並木 則行2松本 晃治2野田 寛大2千秋 博紀3平田 成4出村 裕英4 (1.日本大学理工学部航空宇宙工学科、2.国立天文台、3.千葉工業大学惑星探査研究センター、4.会津大学)

キーワード:小惑星、リュウグウ、ラフネス、クレーター、ボルダー

小惑星探査機はやぶさ2は,2018年に小惑星 Ryugu(162173)に到着し,搭載機器の一つであるレーザー高度計(LIDAR)を用いて,小惑星の形状測定を行ってきた.本研究では,LIDARが実際に測距した地形データに基づき,小惑星Ryuguの水平方向距離(ベースライン)に対するmスケールでの表面ラフネスを統計的な手法[1]を用いて計算した.ここで,小惑星における表面ラフネスの研究は,主にレーダー観測や熱赤外カメラによる熱放 射観測に基づいたcmスケールの表面ラフネスと,本研究におけるLIDARのようなレーザー高度計の測距データに基づいたmスケールの表面ラフネスの2つに大別される.後者の場合,表面ラフネスは,ベースライン毎に傾斜を取り除いた標高(ジオポテンシャル高度)変化の平均二乗誤差として計算され,複数のベースラインにおける表面ラフネスのフィッティングから,粗さの傾向を示すハースト指数H(粗さ指数:H=0~1)を算出することが出来る.この手法を用いることで,同じベースライン毎に複数の局所的な領域における表面ラフネスの比較や,月や水星といった小惑星より大きな天体との定量的な比較が可能となる.過去の研究から,月や水星,低空隙率(約20%)・小惑星Erosの表面ラフネスは,ハースト指数Hが1に近い傾向,すなわち,ベースライン毎に表面ラフネスが線形的に増加する自己アフィン性が確認されているが[2],[3],[4],高空隙率(約40%)・小惑星Itokawaに関しては,そうした傾向が見られていない[5],[6],[7].このことから,表面ラフネスと,ラフネスの傾向を示すハースト指数は,小惑星の起源と表層進化を特徴付ける一つの手がかりになることが期待される.また,表面ラフネスを計算する上で,水平方向への距離の物差しとなるベースラインについては,既に複数の計算方法が考案されており[7],使用するLIDARのデータセットに合わせて適切な手法を選択する必要がある.本発表では,小惑星Ryuguにおけるベースライン計算方法を示すとともに,複数のベ ースラインでの表面ラフネスとハースト指数, さらには Ryuguの形状モデルを使用した3次元ラフネスマップを作成し,ラフネスとクレータやボルダーなどの地形との関連や他の小惑星や惑星との比較を行いラブルパイル天体の表層進化を探る新たな手掛かりについて議論する.

謝辞: 本研究は,2019年度・会津大学宇宙情報科学研究センター共同研究により実施され,日本大学大学院 理工学研究科 航空宇宙工学専攻(阿部研究室)・Mr. 増田陽介の修士論文としてまとめられた.

参考文献: [1] Shepard, M. K., et al. (2001) J. Geophys. Res, 106,32777-32795. [2] Rosenburg, M. A., et al. (2011) J. Ge- ophys. Res, 116, E02001. [3] Susorney, H. C.M., et al. (2017) J. Geophys. Res, 112, 1372-1390. [4] Cheng, A. F.,et al. (2002) Icarus,155,51-74. [5] Abe S., et al. (2006) Science, 312,1344-1347. [6] Barnouin-Jha,O. S., et al. (2008) Icarus, 198,108-124. [7] Susorney, H. C.M., et al. (2019) Icarus, 325, 141-152.