JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS08] Mars and Mars system: results from a broad spectrum of Mars studies and aspects for future missions

コンビーナ:宮本 英昭(東京大学)、臼井 寛裕(東京工業大学地球生命研究所)、原田 裕己(京都大学理学研究科)、Sushil K Atreya(University of Michigan Ann Arbor)

[PPS08-P10] 紫外線Cによる鉄カンラン石からの3価鉄溶出量及び鉄化合物の増加

*小森 信男1 (1.東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科)

キーワード:紫外線C 、酸性水溶液、3価鉄、火星、針鉄鉱、メタホーマン石

火星の表面に酸化鉄が多く存在する一因を説明するために、中学校科学部において以下のような実験を行った。
pH2のできるだけ脱気した塩酸及び硫酸中に入れた鉄カンラン石に紫外線Cを照射した。鉄カンラン石は、福島県川俣町産のものである。鉄カンラン石は整形されていないが、同じような形状のもので約1gである。これらの鉄カンラン石試料を酸性水溶液を入れた試験管に浸した。そして紫外線を200時間以上照射した。そして数日毎に、デジタルパックテストで水溶液中の全鉄イオン及び3価鉄イオン濃度を測定した。 紫外線Cは殺菌灯によって発生させる。このピーク波長は245nmであり紫外線強度は約20W/mである。
この実験の結果、酸性水溶液中の3価鉄イオン濃度は、紫外線を照射した場合の方が、照射しない場合よりも明らかに増加した。また全鉄イオン濃度に対する3価鉄イオン濃度の割合も、紫外線を照射した場合の方が照射しない場合よりも大きくなった。この実験は、塩酸、硫酸とも3回以上行い、全て同じ結果となった。
 実験後、紫外線を照射した試験管中には、褐色の微粉末が、照射しない方よりも多く生じた。塩酸の場合、紫外線を照射した試験管中に生じた微粉末は、X線回折結果より、非晶出のものが多いと推定された。そしてローレンス石と針鉄鉱が含まれていることがわかった。同様に硫酸の場合は、メタホーマナイトと緑礬が含まれていることがわかった。
 以上の実験結果は紫外線Cが、水溶液中に浸した岩石から溶出する3価鉄イオン濃度を増加させ、生じる鉄化合物の量を多くすることを示している。
 火星上では、鉄酸化物や硫酸塩鉱物が発見されている。太陽からの紫外線Cは、過去の火星の海が干上がる過程で、これらの鉱物の生成を促進したと推定する。