JpGU-AGU Joint Meeting 2020

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] 惑星科学

コンビーナ:仲内 悠祐(宇宙航空研究開発機構)、嵩 由芙子(会津大学)

[PPS09-03] 木星より重い巨大ガス惑星による原始惑星系円盤のギャップ形成と質量降着率への影響

*田中 佑希1金川 和弘2田中 秀和1谷川 享行3 (1.東北大学、2.東京大学、3.一関工業高等専門学校)

キーワード:惑星形成、原始惑星系円盤、巨大ガス惑星、円盤惑星相互作用

原始惑星系円盤内に存在する巨大ガス惑星は,周囲の物質と重力的に相互作用することによって,自身の軌道に沿った領域に低密度のギャップ構造を形成する.どのような特徴を持つギャップが形成されるかは,惑星質量や円盤の粘性,スケールハイトなどのパラメータに依存し,それに伴ってギャップを介した惑星への質量降着や惑星の軌道移動に影響を及ぼす.そのためこの過程は惑星系の形成と進化を考える上で重要である.また近年ではALMAによる電波観測によってギャップを持つ原始惑星系円盤が多数存在することが明らかになっており,それらのギャップは円盤内に埋もれた惑星によって形成された可能性がある.
これまでに数値流体計算を用いてギャップ形成の研究が活発に行われており,ギャップの幅や深さ,惑星への質量降着率などが詳細に調べられている.しかしそれらは木星質量程度やそれよりも軽い惑星に注目したものがほとんどである.また,木星を超える質量を持つ惑星に着目した研究も少数存在するが,質量降着率の予測が数桁食い違うなど,超木星質量による円盤のギャップ形成に関しては,理解が十分に進んでいるとは言い難い状況にある.木星より重い系外惑星は多数発見されているため,これらの形成および進化の過程を理解することは,惑星形成理論全体としても重要である.
我々は,数値流体計算コードFARGOを用いて,1-10木星質量の重い巨大ガス惑星によるギャップの形成とその特徴のパラメータ依存性について調査した.FARGOは回転するガス円盤の移流を高速に解くことに特化したコードであり,円盤と惑星の相互作用の研究において多く用いられている.本研究では,惑星質量,円盤の粘性,およびスケールハイトを変化させ,形成されるギャップの特性を調査した.
その結果,惑星質量を大きくすると形成されるギャップは深くなっていくが,典型的な円盤のパラメータの場合は3木星質量を超えるとギャップ構造が非定常となり,ギャップ領域の低密度ガスが周囲のガスと撹拌されることでギャップ内のガス面密度が上昇する効果があることが分かった.その結果,過去の研究で得られているギャップ内の面密度の経験式から予測される値よりもギャップが浅くなることが判明した.したがって,重いガス惑星に対しては経験式が予測するよりも質量降着率が大きくなる可能性がある.さらに,円盤の粘性やスケールハイトを変化させた場合は,ギャップに非定常を起こすのに必要な惑星質量も変化することが分かった.一連の計算から得られたギャップ構造を元に,惑星への質量降着率のパラメータ依存性について,超木星質量の惑星への質量降着率に関する先行研究と比較しながら議論する.